または

病の亡命者

包帯を巻いた寡黙な男と旅をする少年。
少年の正体はとある国の王子。王族という生まれ故に、国の情勢や
政治に不満を持った国民たちや、賞金稼ぎやギャング達に命を狙わ
れることも少なくない。
王子は何故そんな危険を冒してまで、男と一緒に旅をしているのか。

傷の狩人

森に囲まれた小さな村で、狩りを生業にして暮らす女性。
両親と死別したとき、彼女はまだ成人していなかった。
そして彼女の妹は、両親が死んだことすらわからない年齢だった。
生きるため、妹を養うため、彼女は必死で狩りの腕を磨いた。
どんな状況でも諦めず、静かに未来を見据える彼女の瞳は、そのよ
うな生活のなかで培われたものだ。
妹は、優しく頼りになる姉のことを、母親のように慕っている。

遺の射手

戦争用の兵器として製造された、機械兵の初号機。
過去にある重要な指令を完遂できず、欠陥品として王城の地下倉庫
に破棄されていた。
ある時、生まれ持った持病の悪化により、王国から見捨てられてし
まった王子が、地下倉庫に連れてこられた。
この出会いが、彼の運命を大きく動かすこととなる。

昏の剣客

とある大名に仕える殺し屋の女性。
依頼された人物を暗殺する術に長けており、特に居合の腕で彼女の
右に出る者はいない。その実績は確かなもので、大名たちの信頼も
得ている。
茶屋で団子を嗜むなど、普通の生活にどこか憧れるような一面を見
せることが時折ある。

頂の冒険者

数々の名峰を制してきた、山を愛する男。
彼が山を登っているのはひとえに「己の生を見出す」ため。
これまでいくつもの自然の驚異が牙をむいてきたが、その度に乗り
越えてきた。
この山の頂に達することができれば、彼の望む「生」は見つかるだ
ろうか。

人間姿の怪物

夢喰いの怪物が、ある少女の夢を喰って人間となった姿。
その見た目は、着衣の色を除いて、夢の主であった少女と完全に同
一である。
しかし怪物は、人間の姿を得ることと引き換えに、様々なモノを失
っているようだ。

剛の男囚

とある未来の世界、家族三人で暮らす男性。
そんな彼のなんでもない幸せな日常は、突如現れた『花』によって
奪われ、無残にも壊されてしまった。
その日から男の日常は変わった。『花』に対する復讐。ただそれだ
けが男の生きる原動力となった。

憂の女囚

とある未来の世界、家族三人で暮らしていた女性。
囚人の身となった彼女に告げられたのは、『花』との戦闘データを
記録するための実験が行われているという事実だった。

それでも彼女は夫と共に立ち向かう。全ては『花』を討ち、息子
の無念を晴らすために。

異存たる剣客

文月の七 曇天

人の無念を背負い。
人の願いを叶え。
人の祈りを聞き届けた。
だが其れは、他の人々からの恨みを買う事に他ならない。
絶え間無く伸し掛かる、罪の重圧から逃げる事は叶わない。
其れでも私は、一歩、又一歩と足を進めるしかなかった。
足を止めれば、呑まれて仕舞うから。

異存たる冒険者

12月29日 豪雪

俺は、俺が求めるもののために戦う。
明日も明後日も明々後日も。
戦いの先に求めたものがあるかはわからない。
それでも俺は戦う。
明日も明後日も明々後日も。
求めて戦い続けることだけが、俺の生きた証なのだから。

異存たる狩人

XX月XX日 寝苦しい夜

今日も、ひとりの男を殺した。
人の殺し方にはいったいどれくらいの種類があるのだろう。
そんなこと、普通に生きる人には無用な知識だ。
しかし私には、そんな知識ばかり増えていく。
ひつじを数える代わりに、殺した敵の数を数えながら……
私は暗い眠りにつく。

異存たる少女

X月X日 くもりのち雨

今日は、雨がふりそうだったので、おうちですごしました。
やっと、図書館でかりていた本を読みおえました!
海を舞台にした、冒険のおはなしです。
海って、見たことがないけれど、すごくしょっぱいんだって。
こどものわたしが知らないことが、たくさんあるんだなあ。
明日もしはれたら、海のずかんをかりてこようかな?

異存たる亡命者

5月1日 観兵式

この式典の意義。僕は今日、そればかり考えていた。
音楽に合わせ、整った足取りで進む兵士達と、
その器用さを顕示せんと、銃の腕を披露する機械兵達。
人々から歓声が上がる。
軍力を示威する事は確かに、国民の安心に繋がるのだろう。
だが、この式典の意義は他の国を牽制する為でもある。
楽し気な行進曲と人々の笑顔とは裏腹に、
この式典さえ争いの一部なのだと、僕は痛感せざるを得なかった。

祈ノ攻機

「ヨルハ部隊」に所属する汎用戦闘モデルのアンドロイド。
剣撃による近距離攻撃と、サポートシステム「ポッド」を用いた
遠距離攻撃を駆使し、機械生命体と戦う。
ヨルハ部隊のアンドロイドは感情を持つことを規則上禁止されてい
るが、モデルごとに個性は存在する。
好戦的な性格の機体が多いB型において、2Bは比較的冷静沈着な
性格をしている。

讐ノ戦機

「ヨルハ部隊」を脱走したアタッカータイプのアンドロイド。
アタッカータイプは主に近接戦闘に特化しており、後に正式採用さ
れることとなるB型のプロトタイプモデルになっている。
そのため、B型には搭載されていない「バーサーカーモード」とい
う特殊な機能を有しており、防御を捨てることで戦闘能力を爆発的
に高めることができる。

異存たる射手

11-13 10:23:16 MN023941

自ら悪に抗い、多くの善に寄り添った。
自ら世を正し、悠久なる平和を祈った。
そんな彼が望んだ理想は、跡形もなく消えてしまった。
彼を蔑ろにした世界を、私は許しはしない。
だとしても、報復をすることはないだろう。
彼の生きた証が、誇りが、記憶に残り続ける限り。

絶ノ探機

「ヨルハ部隊」に所属するスキャナータイプのアンドロイド。
スキャナータイプは調査任務に特化しており、ハッキングによって
様々な情報収集を行うことができる。
戦闘面においては、他の戦闘用アンドロイド達のサポートを行うこ
とが主だが、機械生命体そのものや装備の制御を奪うなど、その応
用性には目を見張るものがある。

異分岐ノ戦機

この手で掴んだのは誇り。
この手に掴んだのは誓い。
この手に掴んだのは願い。

私は何を誇り、何を誓い、何を願ったのか。
あの日、あの時、あの場所で出会った彼らは……
今となっては、もう何も思い出すことができない。

形而上の剣客

季節は移ろいゆく。
春から夏へ。夏から秋へ。秋から冬へ。冬から春へ。
日々の変化を色で感じながら、私達は老いてゆく。

私はその日々を感じられているだろうか?
春を、夏を、秋を、冬を。
今となってはそれももうわからなくなってしまった。
誰か教えてくれないか。私の心を彩っているのは何色なのか。

形而上の狩人

憎むべき相手、復讐の相手。
怒りを力に変え、憎しみを力に変え。
私は穢れた血に染まる。
がらんどうの心は満たされていく。
纏う黒き鎧は益々黒くなっていく。

いまや私は…………

立派な殺人者となっていた。

異分岐ノ探機

彼女と共に向かった場所。
それはどんな場所よりも綺麗で。
彼女と共に過ごした時間。
それはどんな時間よりも貴重で。

これは昔の僕が保持していたデータらしい。一体誰のことだろう。
そういえば、今日は単独任務ではなくパートナーがいるらしい。
2号機B型モデル……いったいどんな人だろう。

機械人形の少女

POD-042「報告:型番不明のヨルハ型アンドロイドを発見」
POD-153「推奨:ブラックボックス信号の確認」
POD-042「報告:ブラックボックス信号の確認不可能。アン
ドロイドに擬態した新手の機械生命体の可能性あり」
POD-153「推奨:危険因子除去の為、未識別個体の速やかな
破壊」
フィオ「わ、かわいい! これなぁに? なでていいかなあ?」
POD-042「……」
POD-153「…………」
POD-042「報告:うれしいという感情」
POD-153「同意。破壊命令を撤回する」

形而上の冒険者

槍を手に取り、獲物を探し、殺す。
彼らは俺が生きるための糧となる。
俺もいつか彼らが生きるための糧となるかもしれない。
しかし、畏れることはない。
命は巡り巡っていく。それが生きるということなのだ。

異分岐ノ攻機

私は機械生命体を殺し続ける。
それが私に課せられた使命だから。
私は生と死の螺旋を繰り返す。
それが私に定められた運命だから。

けれど、今の私は何のために戦っているのだろう。
この身は、すでに自由の身だというのに。
何か、何か大切な目的を忘れている気がする。

形而上の射手

怒り、妬み、怨み、
悔み、悲み、憎み。
私に銃口を向ける者。
その弾丸に込められた感情を推察。

恐怖、苦悩、空虚、
諦念、後悔、絶望。
私に銃口を向けられた者。
その者が最期に抱く感情を推察。

機械人形の亡命者

不安だった。
自分の指揮で、民の生死が変わるのだから。
孤独だった。
向けられる視線に含まれた、苛立ちと懐疑。
戦火の中、ただひとり。

そんな時に、君と出会った。
造られた兵士。冷たい人、いや、機械だと思った。
──けれど、君はそうじゃなかったんだ。

輪廻実存の剣聖

これは、運命と豪雨を越えた二人のお話。

長き雨が止んだ後の、雲間から射す光の様に。
暖かく、そして安らかな時間。
二人はようやく、新たな生活を手に入れました。
何色にでも染まれる、真白な生活を。

輪廻実存の冒険王

これは、ガサツな父が健在だった頃のお話。

父は、母や娘に対して、ひどい父親を演じていました。
いつどこで野垂れ死ぬかわからない自分のことを、
家族に心配してほしくなかったからです。
しかし、父が冒険に旅立つ日の朝、娘から贈り物をもらいました。
父はあふれ出す感情をぐっとこらえ、娘に背を向けます。
もし娘を抱きしめてしまったら、
きっと冒険には出られなくなってしまうから。

輪廻実存の黙約者

これは、ある女性がまだ幼い子供だった頃のお話。

ありふれた家族、ありふれた日常、ありふれた幸せ。
そういうものに囲まれて生きていられたら……
ほんの小さなきっかけで、少し歯車がずれただけで、それは音をた
てて崩れ、戻ってくることはありませんでした。
そしてこの世界は、その理由を答えてくれることもありません。
こんな世界でどうやって生きていけばいいのでしょう?
彼女は暗闇のなかで、ひとつの誓いを立てました。
その誓いは彼女のたった一つの希望になりました。

輪廻実存の革命者

これは、王子が父王に捨てられる前のお話。

王子はその豪華な衣服に袖を通しながら考えていました。
滲み出す紅に消えていった真実を、
彼女が言いかけた言葉の続きを。
そして、これから自分が口にしなければならない言葉の事を。
それは彼が初めて父を疑った日。
誉れ高き王家の礼服が、彼にとっては、
自身の犯した罪の象徴にさえ感じられました。

輪廻実存の繋囚

これは、囚われた女が人だった頃の話……

遺伝子工学を修めた学者の女がいました。
彼女は「世界を緑で満たすこと」を目標に研究を進めます。
その研究の中、偶然生み出された『花』。
『花』は人を喰って増殖し、世界へと広がっていきました。
彼女は罪を償うため、とある策を講じることにします。
それはとても愚かな行為でしたが……
彼女に残された道はそれしかありませんでした。

輪廻実存の銃機兵

これは、従順な兵士の男が捨てられた頃のお話。

男は思い出していました。
戦争へ赴く前に与えられた、王族の少年の護衛任務。
兵達の命を重んじ、懸命に軍の指揮をとる少年の姿。
戦場から撤退する最中、少年と交わした秘密の約束。
戦争の真実を知ってもなお変わらない、少年の慈悲。
ノイズと共に、ひとつずつ消えていく記憶……
残ったのは果てしない暗闇と、
男の胸に残る、僅かな違和感だけでした。

輪廻実存の罪囚

これは、空っぽになった男が生きる糧を得る話……

眠り続ける妻を見守る一人の男がいました。
妻は『花』との戦闘で重傷を負い、もう何日も目が覚めません。
男は、妻を守れなかったことをひどく後悔していました。
その日から男は力を欲しました。
もう二度と同じ悲劇を繰り返さないように。
大切な人さえ守れればそれでいい。
それがまた、新しい悲劇を生んだとしても。

異存たる女囚

10/10 lOVe

『愛情』とは一体何なのでしょうか?
気になる相手に好意を抱くことか。
生んだ我が子に対する心なのか。
弱い者を可哀想と思う性なのか。
様々な愛の形があって、全部素晴らしいものなのだろう。
膨れ上がった『愛情』は人に何倍もの力も与えてくれる。
それが、偏愛でも、性愛でも、愛憐でも……愛憎であっても。

守護たる狩人

Fr5:17 - 暗影の守護者

心の底で澱のように溜まっていく黒い感情。それが力になる。剣を
振るう為の力、この世界から、悪の命をひとつづつ摘み取っていく
為の力だ。しかし黒い影が私の心を覆う夜には、底知れぬ空虚が私
を襲う。一度失われた大切なものは、いくら剣を振るっても戻って
くることはないのだ。いったい何のために……しかしそんなことを
考えることに意味はない。歯を食いしばる。また今日もどこかで大
切な命が奪われているのだ、だから私は剣を振るうのだ。

形而上の女囚

私は祈る。
目の届く範囲だけでも救いたいと。

私はさらに祈る。
この世のありとあらゆるものを救いたいと。

私は祈り続けた。
そうしてこの手には一体何が残っただろうか。

怨の兵士

長引く戦火の中で幼少期を過ごした少年。
そのような環境は彼の心に暗い影を落とした。
丁寧にしつらえられた屋敷の子供部屋は、彼の心の影を少しでも取
り除こうと、かわいらしい装飾が施されている。
しかし、そんな配慮があってもなお、少年はいつも、不安に囚われ
ていた。そして、自分の弱さに辟易としていた。
強い男になりたい……それが少年の望みだった。

輪廻実存の喪失兵

これは、孤独な少年がひとつの真実にたどり着く頃のお話。

少年はずっと求めてきた復讐を果たしました。
そして、その成果として少年に与えられた「真実」は、
これまで信じてきた全てのことを、少年から奪いさりました。
家族、愛情、努力、憎しみ、悲しみ、怒り、信頼、希望……
全てが暗澹たる現実の中に飲み込まれていきました。

異存たる男囚

10/09  juSTice

『正義』とは一体何なのだろうか?
悪事を働くものに制裁を加えることか。
貧しき者に金銭や食料を与えることか。
愛する人々を命をかけて守ることか。
しかし、そういった行いは偽善だと蔑まれることがある。
でも、たとえ偽善でも自己満足だとしても。
己の義を貫くことこそが『正義』ではないだろうか。

形而上の男囚

奪われたなら奪い返せばいい。
殺されたなら殺し返せばいい。
憎しみは憎しみを呼び寄せ、復讐は復讐を招く。

負の連鎖に囚われた俺に、もはや正しい道を歩む術はない。
でもそれでいい、それが俺の生きる道なのだから。

崖の戦士

崖の村という、人里離れた村に住んでいる銀髪の女性。
身体の左半分だけがマモノに侵された「マモノ憑き」という姿にな
っており、特徴的な服装をしているのは、身体を蝕むマモノの侵攻
を抑えるため。
乱暴な口調や気性の荒さは祖母の影響を大きく受けており、祖母か
らもらった「月の涙」という伝説の花の髪飾りを大切にしている。

謎の異形

布を身に纏った、骸骨のような見た目をした謎の生き物。
元々は洋館に執事と二人で住む美少年だったが、とある事件をきっ
かけにこの姿へと変わり果ててしまった。
フワフワと浮遊しており、魔法での攻撃を得意とする。頭部だけの
状態になっても生き延びることができ、跳ねたり転がったり会話を
することも可能。

魂の青年

原因不明の病「黒文病」に侵されてしまった、妹ヨナを救うために
旅にでた青年。
言葉を話す本の「白の書」や、カイネ、エミールと仲間になり、過
酷な戦いを乗り越えてきた。
仲間想いの彼は、大切な者を救うためなら手段を選ばない。
それがたとえ、どんな手段であっても。

異分岐の青年

村に住む人たちのお願いを聞く。そうやってお金を稼ぐ。
両親のいない俺たち兄妹。小さい頃から生活は変わらない。
それでも嬉しいことはある。5年前にヨナの病気が治ったんだ。
元気になって本当によかった。あとはいつか素敵な人と……

そういえばヨナの姿が見当たらないな。
え、シチューの材料を買いに行った?
なんで引き止めなかったんだ、エミール!!

異分岐の戦士

なんだ、キョトン顔でこちらをジロジロと見て。
私がいつもと違う服を着ているのがそんなに珍しいか?
ふふ、そういってくれるな。
魔物がいなくなって、あの服を着る必要はもうないからな。

実はこれ、おばあちゃんが若い頃に着ていたものなんだ。
今日は……アイツと会う日だから。
……気に入ってくれるだろうか。

異分岐の異形

え、なんですか? この服ですか?
へへへ、どうでしょう! ちょっとお洒落してみたんです!
なんたって今日は一緒にお出かけする日ですから!

といっても、海岸の町にある酒場に行くだけなんですけどね。
え? いやいやいや違いますよ! な、何言ってるんですかカイネ
さん!
デデデデデ、デートだなんてそんな!!

守護たる冒険者

Ar2:8 - 山里の守護者

その男は、人里離れた山奥で細々と暮らす、山の民の子として生ま
れた。自然と共に生き、やがて土に還る、質素な営み。ある時、そ
んな暮らしに飽いた男は、故郷を離れ街に出る。そこで見たのは、
「金」。金銭という、男にはなかった価値観に支配される人々だっ
た。男はまだ若すぎたのか、金の魔力に憑りつかれていく。

異存たる兵士

XX月XX日 冷たい明け方

いつも希望は、手の届かない場所にある。
だから人は、それに憧れをいだくのだろう。
でも、それに手を伸ばすことを俺は恐れている。
孤独。
その冷たい居心地の良さに、浸りながら、
窓枠に切り取られた、小さな空を眺める。

形而上の兵士

ある人は俺に問う。
この国の正義を信じるかと。

俺は沈黙する。
そして無心に剣を振るう。

敵を殺し、敵を殺し、敵を殺し……
本当の敵はどこにいる?

和の兵長

部下たちに陰で「臆病者」と呼ばれる、軍隊長の青年。
汚名の原因は、彼の戦闘での撤退指示の多さと、弱腰な姿勢。
ある作戦前、攻撃部隊に志願してきた少年の申し出を有無を言わさ
ず却下したことで、その少年が姿を消してしまう。
少年の身を案じるのは彼の性格故か、
それとも彼が心の中に抱えた何かがそうさせているのか。

輪廻実存の失墜兵

これは、野心を抱く青年が一兵卒だった頃のお話。

彼には名誉勲章を受章するという夢がありました。
夢を追い求め、上官の作戦を無視し独断行動をとった対価として、
彼以外の仲間たちは全員戦死しました。
ほどなくして、彼は名誉勲章を授与されることになります。
自らの身勝手な行動で、多くの仲間を死なせてしまったのに。
名誉とは一体……彼はその答えを必死に追い求めました。

形而上の少女

着る。脱ぐ。
着る。脱ぐ。

毎日毎日、まるで着せかえ人形のように、
たくさんのお洋服をとっかえひっかえしてみたいなぁ!
リボン、フリル、レース、エナメルのくつ、etc...
絵本とユメの中の世界でしか知らない、かわいいモノたち。

うーん、でもやっぱり、
わたしは着なれている服がいちばんおちつくみたい。

忘我救国の冒険者

俺は今、冒険の途中で立ち寄った街でこの手紙を書いている。
我ながら珍しく、手紙でも書いてみたくなったのだ。
娘は元気にしているか?
男の子と文通しているとお前から聞いたが、その後どうなんだ。
もし変な奴だったら、釣りの餌にしてやる。
と言いたいところだが、その役目もお前に託す。
ともかく、娘に変な虫がつかないよう気を付けてくれ。

9月10日 海岸の見える宿より

守護たる射手

Di6:13 - 教会の守護者

私にとって、この世界は闇そのものに見える。闇に広がるは瞬く光
の粒子達。たった今も、闇から一つの光が失われた。光の悲鳴が響
き、光の減衰の感覚が伝わってくる。周囲に残るのは、やはり闇だ
け。次の光を探して私は進み続ける。他の光より僅かに輝かしい、
たった一つの光を守るために。

形而上の亡命者

過ぎ去ったものを追い求め、未だ来ないものを追い求める。
そうして過去に未来にすがりついている間に、
今ここにこうして、現に在るものを見失ってしまう。

私のこんな人生に、果たして意味はあるのだろうか。
私の歩むべき道に、果たして答えはあるのだろうか。
私の生きる世界に、果たして救いはあるのだろうか。

零の長女

右目に歪な『花』が生えた、銀髪の美女。
その麗しい見た目からは想像できない、怪力と剣戟能力を持つ。
「ウタ」を使い、強力な力を行使する「ウタウタイ」という存在。
同じく「ウタウタイ」である五人の妹を殺そうと試みているため、
「裏切りのウタヒメ」と呼ばれ、世界中で追われている。
性格は粗暴で、面倒臭がり屋で、勝ち気で、非常に短気。
また、性に開放的で多数の男性と肉体関係を結んでいるという。

異分岐の長女

おい、ワン。なんでドレスなんて着ないといけないんだ。
こんなことしなくても、男には困っていません。
え? 政治? 知らん、竜にでも食わせておけ。
お、おい、やめろ! 殺すぞ! 下着はいい! あ、やめっ!

……着飾った自分。妹達の笑い声。健やかな日々。
……こんな「異分岐」が続けばいいと私は祈った。

絶世歌姫の少女

フィオ「ふぁーあ……ん……なに、このお洋服……」
少女が目を覚ますと、見知らぬ場所で、見知らぬ服を着て、見知ら
ぬ女の人に囲まれていた。

トウ 「あれえ? ワンねえちゃん、ひょっとして身長縮んだ?」
フォウ「トウ姉様、失礼よ。姉様に向かってその物言いは!」
スリイ「…………」(寝ているようだ)
ファイブ「まあ……お胸の成長も止まってしまったようですわ!」
ワン 「……おい、私はこっちだ」

絶世歌姫の剣客

──因縁に縛られし 血涙の雨
──忠誠に捧ぐ 鋼の切先
──数多に築く 屍を積み重ねん

この服を纏っていた青い髪の少女は、
使命に身を窶し、恋慕に心を焦がし、悔悟に魂を砕かれた。
だが、彼女の傍にはいつも、愛する人が居た。
共に暮らし、共に料理をし、共に……道を踏み外す。
それが理解者、恋人という物の在り方なのだろうか。
私には解らない。暗殺者は人の心など理解してはならないのだから。

匸の兵器

とある研究施設で生体兵器として造られた少女。
兵器として無数に製造されており、この少女もその中の一人。戦闘
が始まると瞳の色が紅に染まるのが、何よりの証拠と言える。
少女は謎の白き怪物を討ちながら、頭の中に響く声を頼りに足を進
める。

輪廻実存の兵姫

それは、彼女が目を覚ます前のお話。

渦巻く螺旋、繰り返す死。
幾つもの命が造られ、目覚め、消えていきました。
幾つもの希望が、形も得られずに潰えていきました。
そんな無情な争いから、ただ一人解き放たれた少女。
──ただ独り、ただひとり。
希望を託された彼女は、誓いを果たすため地上を進みます。
長女の願った、思い出の場所を目指して。

異存たる兵長

11月7日 ある潜入作戦の日

今日も変わらず、僕は人間に銃口を向け続ける。
怯えた目、何か言いたげに開く唇、小刻みに震える身体。
そんな奴をこれまでも何人も見送ってきた。
ただ軍に都合の悪いというだけの理由で。
軍に所属する限り、僕が咎を背負い続ける限り、
この運命から逃れることはできないのだろう。
もしかしたら、いずれ僕は、彼らのことを……

形而上の兵長

ザリザリと音がする。
細かい砂石の転がり擦れる音だ。
ゴツゴツと音がする。
アスファルトを踏み鳴らす音だ。

……どこか懐かしい音がする。
あぁ、そうだ。生まれ育った故郷の音だ。
僕は改めて認識する。己が戦場を駆け続ける意味を。
それは故郷に置き去りにした、大切な想いのため。

守護たる亡命者

Ri5:30 - 哲理の守護者

もし神が居たのなら、血と争いの絶えないこの世界を嘆くだろう。
もし神が居たのなら、救いを待つ者の元へ使者を遣わせるだろう。
もし神が居たのなら、人々の手を通じてこの世界を救うのだろう。
しかし、神は何を『救い』と捉えるだろうか。信じる正義の違いこ
そが争いを生む。自分の正義が神のそれと違えた時、歩んできた道
さえ否定するその『救い』を、私達は何と形容するのだろう。

異存たる兵器

__月 __日  拾った物

日記帳、というものを拾ったので書いてみる。
日付は分からなかったから書いていない。
いつから今日で、いつから明日なのか分からないから。
この日記帳は、見た夢の記録に使ってみようと思う。
人々は、どんな風に日記を使っていたのかな。

形而上の兵器

──時々、分からなくなる。

眠りの中で見る景色、聴く音、嗅ぐ匂い。
それは私以外の記憶、だからそれに意識を向けようとすれば、
混じり合うように、『私の感覚』は曖昧になっていく。

けれど最近は、起きている間にも分からなくなる時がある。
「これは、誰の感覚なのだろう」
再びあの施設へ向かう途中、私はそんな事を考えていた。

守護たる女囚

F610:10 - 聖域の守護者

陽が差し込まない神殿の奥。秘匿の祭事が、厳かに行われる場所。
五人の神官がそれぞれ、聖域の宝といえる品物を持ち寄っている。
黄金の羅針盤、不死鳥の羽毛、賢者の指輪、天使の秤、神の日記。
神殿の扉が閉まる。そして、この扉はもう二度と開くことはない。
この祭事は、祝福は、誰も知らない。知られてはいけない。絶対。

破砕裂の男囚

キル ナグル クダク
ウツ ツブス コワス
ツク タタク カジル
タツ ヤブル キザム
サス エグル ムシル
キミ コロス キレイ

黒緋染の狩人

ひとつのものを失い、
ひとつのものを得る。
人生はその繰り返し。
私の選んだ道は暗い。
失ったものの対価を、
取り戻すため彷徨う。
それが流れ者の人生。

冒険者の夏

 ・冒険家の夫は、旅立つ準備をしながら妻に話しかける。
夫「お前、俺がまた山に行くと思ってるな? 今回は海だ」
夫「遥か日向かしの海に、伝説の白鯨が棲んでいると……」
 ・妻は夫の話を無視して、部屋の奥に引っ込んでしまう。
夫「(まったく、浪漫のわからんやつだな)」
 ・妻は何かを持って戻ってくる。
妻「はい、海用の羽織と下帯です」
夫「お、おう……よし行ってくるぞ。ガハハハ!」
 ・夫の後ろ姿を見送る妻。
妻「海なんて大丈夫かしら。あの人かなづちなのに……」

剣客の夏

暗殺者「薄着は勝手が違って困るね……」
 ・変装の準備をする暗殺者の女は、パレオを腰に巻こうとする。
 ・その時、パレオから暗器が落ちて、からんと音を立てた。
暗殺者「……少し、隠せる場所を増やすべきかな」
 ・そう言って女は帽子を手に取ると、少し考え込む。
暗殺者「日傘と帽子、両方使うのは如何なんだろう……」

少女の夏

少女「わーい! 海だぁ!」
 ・少女は波打ち際でバシャバシャと水遊びをしている。
 ・それを浜辺から眺める父と母。
父 「見ろ、あの子、たかが海であんなに喜んで……」
母 「貴方と海に来るなんて、いつぶりかしらね」
父 「すまん。俺がずっと仕事で忙しかったせいで」
少女「パパ! ママ! こっちでいっしょに遊ぼうよ!」
 ・少女の呼びかけに、父が腰を上げる。
 ・父が去ったあと、母は聞こえないほどの声で囁く。
母 「何が本当の幸せかなんて、私にも……」

亡命者の夏

男A「あの子なんてどうだ? 薄幸そうでイイ」
男B「うーん、俺はもっと大人な子が良いかなぁ」
 ・集まって会話をしている、軽薄そうな男たち。
男C「……あそこに居るの、男じゃないか?」
男A「チッ、相手持ちかよ……他探すか」
 ・男Cは小さく呟く。
男C「いや、そうじゃなくて……まぁいいか」

黒の怪物

人間の夢を喰らう種族である怪物。
怪物たちが人間の夢を求めているのは、ひとえに、夢を食べること
で人間になることができるからである。
彼らはなぜ人間の姿になりたいと願うのだろうか? 単に本能とし
てとらえていた純粋なる渇望であったが、彼自身は自分なりの答え
を見つけ出したようだ。

白の少女

貴族によって支配された階級社会の国に暮らす少女。
元は平民だったが、国の政策により最下層身分『山羊の民』とされ、
貴族のみならず平民からも差別を受けるようになった。首輪などの
拘束具は、『山羊の民』の証である。
夜、眠るたびに『檻』の中に閉じ込められ、悪夢に囚われていた。

白の少女

カイブツさん、みんな、今までありがとう。わたしはちょっと だけ、遠いところへ行ってきます。これからあの子に、みんな との思い出をたくさんお話するのが楽しみだな。 わたしね、いつかいちばん悲しい日がきたとしても、みんなが わたしに優しくしてくれたことを思い出して頑張るよ。みんな が悲しいときは、わたしが応援するよ。みんなのこと、ずーっ と忘れないよ。だから、会えなくてもさみしくないからね。 バイバイ! またいつか一緒に遊べる日を楽しみにしてるよ。

守護たる兵器

No10:1 - 手紙の守護者

四角い空と磔の生。火は見えずとも、緩やかに死してゆく病床の上。
失意の泥濘に脚を呑まれながら、少女は息を続けていた。その息を
繋いでいたのは、母からの手紙と、治療法を懸命に探す父の背中。
しかしその愛は呪いと変じてしまった。娘は母からの手紙さえ握れ
なくなってなお、両親のため泥濘に抗い続け、それを見て父は禁忌
に縋ってしまう。いつしか手紙は途絶えた、母が真実を知らぬまま。
──そして、その瞳は再び開かれる。同じ形と、違う色で。

黒緋染の射手

ただの信号だと判っている。
ただの衝動だと判っている。

なぜ私は錯乱しているのか。
なぜ私は苦悶しているのか。

私はまた過ちを犯したのだ。
理解してしまったばかりに。

輪廻実存の公女

これは、かわいそうな少女が生まれてくる前のお話。

あるところに、美しいお姫様がいました。
お姫様は、隣国の王子様との間に、それはそれはかわいらしい女の
赤ちゃんを産みました。
しかしお姫様は、生まれたばかりの赤ちゃんを連れてお城を逃げ出
しました。赤ちゃんの命が狙われていたのです。
お姫様はそのまま見知らぬ街で行き倒れ、死んでしまいました。
若い夫婦に拾われて育てられた赤ちゃんは、十分な愛を得ることは
できませんでしたが、とっても素直な女の子に育ちましたとさ。

輪廻実存の怪獣

これは、怪物がかつて人間だった頃のお話。

現状に不満を抱えた若いサラリーマンがいました。人付き合いが苦
手な彼は、会社では損をするばかりでしたが、オンラインゲームの
中では輝く自分でいることができました。
ある時、彼は転職を決意しました。それは、ゲームの中で演じてい
る理想の自分に変わるための一歩でした。努力した彼は、ゲーム会
社へ見事内定。しかし、妬んだ同僚に殺されてしまいました。
彼の「変わりたい」という気持ち──『執着』は、死後なお、どこ
かを彷徨っているに違いありません。

形而上の怪物

「俺が。」
「俺を。」

俺は、いつだって何かを渇望している。
永遠に満たされない喉の渇き。
それは、乾いた地に打ち捨てられて雨を乞う蚯蚓、
或いは太陽に想い焦がれる深い地の底の土竜かのように。

「俺と。」

そう声に出してみたい、
でもその言葉は、自分に似つかわしくない。

擬ノ造機

機械生命体によって生み出されたコピーアンドロイド。
「ヨルハ部隊」の汎用戦闘モデルを模して製造されており、その中
でも生存能力に優れた個体が参照されている。
このコピーアンドロイドは、まるで人類がそうしたように、情報を
伝達しながら個体数を増やし、生存し続けることを望む。

擬態人形の少女

それは不思議なふたつの色。

『白』は怖い色。
だってほかの色で塗り潰されちゃうから。

『黒』は希望の色。
だってみんな暗闇から生まれてくるから。

どっちが本物で、どっちが偽物なんだろう。
本当の私は、どっちの色なんだろう。

機械人形の剣客

彼女達は己が役割を示す衣を纏う。
──それは指揮者たる白と、殺人鬼の黒。
彼女達は自らに連なる者達を従える。
──統括する部隊と、同じ家に属する暗殺者達。
彼女達は責務の為その命を捧げてきた。
──全ては、仕える存在の利益の為。

そう。
彼女達自身も、より上の存在に従う者に過ぎなかった。
司令官や当主という肩書など、言葉に過ぎぬ駒として。

彩涙光の女囚

私はあなたのために復讐を続けた。
身を焦がすほどの力で殺戮を繰り返した。
で どんな 殺し  ね も、あ なた 失っ    う
 も   に  を重 て      を  てし ま   。

だ ら         あ  と  る
 か 何     返   な  有     を    めに。
     度も   す。  た    未      た
        り           来   掴む
       繰

兵長の祝宴

光とは、暖かくて安心できて、『希望』に満ちたものなのだろう。
生きとし生けるものに等しく注がれ、無償の恵みを与えてくれる。
だから僕は「光」を拒絶する。罪に濡れた僕は相応しくないから。

冒険者の祝宴

昔の俺なら、きっと金銀財宝と答えていたはずだ。
しかし今は……頂で見る満天の星空か、煌めく大自然か……いや、
『生きて帰るべき場所』こそが、「それ」なのかもしれないな。

兵器の祝宴

その問いに、私は何を答えればいいのか分からない。
……けれど、きっと、私のそれは『お姉さまの想い』だと思う。
今、私の行先を照らすのはそれ。後の事は、今はわからない。

狩人の祝宴

端的に答えよう。
それは、『闇の深さを知るためのもの』でしかない。
私には永遠に、もたらされないのだから。

少女の祝宴

うーん……むずかしいけど、私は『太陽』さんだと思う!
悲しいことがあっても、太陽さんを見ると元気になるんだよね。
私も太陽さんみたいに、誰かに元気をわけてあげたいな!

守護たる剣客

Ak6:16 - 御家の守護者

その境界線を越えてはならない。その結び目を解いてはならない。
その光に踏み入ってはならない。その影より抜け出てはならない。
始まりと共に定められた道筋を、外れようとするのは傲慢である。
与えられた場所を、役目を裏切るのなら、奪われる事を覚悟せよ。
葉が花を忘れ、枝を離れる事など許されないのだ。

破砕裂の兵士

イカリノウラニカナシミガアリ
ニクシミノウラニヨワサガアル

ホントウハズットキヅイテイタンダ
オモテトウラノブンレツシタボクニ

無血貌の怪物

ソボナハパストグネクフギモ シュウチャク マヌポメリゾパヅギ
チソユ シット ビグエヲスワモルボヌプ ウラミ ヒヅカリパゾ
ミヅコリアウソチナギ ザンカイ ズポピアオジタワカカボフリピ
コベロ クチハテル ゴソンゾポツソクサトヅソルリンズエパジウ
ユヤギフワポコジギトハアレゾギパソ ハグルマ ステゴオウヴキ
ニソクアヌホヘポゴ ホンノウ ヨクボウ ゴヅヅソナヨルイボヘ
アギカイフヲヌワボステクイアヲギゴ ニンゲンニナル アアヘボ
ヂヴアロモジダ ウバイトル ユメクイ シアフフオノボウピアソ
モヂデ トモダチ ミハコレイガルゾンパジコキラソルドシンユワ
エリポヒウドスツテアンヲウヴモ ゼツボウ ヅアオピナリルドシ

黒緋染の剣客

国を堕とせと命を受けた。
故に私は、其の首を断つ。
眠れ、偉大なる敵の皇よ。
貴殿の築いた時代と共に。
然し名君去りし後の世を、
歓ぶ者在れば憂う者在り。
嗚呼、私は命を手折る度、
人の怖ろしさを思い知る。

守護たる兵長

Gr6:8 - 知識の守護者

運命は汝をよく知る他者に委ねよ。過去の後悔を探ることが、全て
の行動の起点となる。人の感情は矛盾ばかり、欲求によって誤るこ
とを良しとせよ。物事を判断する尺度は、大衆の意を正として従う
こと。行動や感情に翻弄されるのは、常に己自身だと心得よ。この
知恵をどう理解し、行動するかは汝次第である。

無血貌の兵器

ガラキアガシニヒヌヅケカイメヅルノル ワタシハ ニカラシマカ
ヴ アナタハダレ ニノルイメラマデワカジ コノカラダニ ルイ
ビラカシ ネムリ アケキリシミレバガメモユキニカネブアシウミ
ムチミフリヘニブルビキスヂミノヅヤグ ユメ サルタレイマオカ
ズミドルシジリビネム コエガ テリスタ ウタガ タルナシキア
ガイベネポビダヒカラブシ キコエル ボナパラクシドヨゲメテイ
タヅシゾア ダレカガ フレニロヤセグヒヂホハソミキランテヌク
ズヴ メザメ ハニキタガメナレハ カエラナイト ギレナシトラ
スワタダヘマヲユロウ アカイ ヅハギヘケヲレドヒレクラハダス
ダソレテヘノメボザツポビワアシベブヘヒツ ワカラナイ エイテ

彩涙光の兵士

切り裂いて、引き千切って、叩き潰して、打ち壊して。
俺はただ敵を殺し、復讐のためと進み続けた。
だっ て、 俺に    そ    か な
         は   れ し     かった。

友も、    金           
   家 も、          俺      ちゃい
    族   も、夢さ      は、何も     な
            えな        持っ    い
               い。            。

契の魔女

魔法使いの素質を見いだされ、学舎に連れてこられた少女。
同じ境遇の子供達が集まる学舎の広間で、
少女はのちに「親友」と呼びあうことになる仲間達と出会う。
故郷から遠く離れたこの地で、
少女の魔法使い修行の生活が始まった。

彩涙光の兵長

軍人たる者、任務に関わるすべてを恐れてはならない。
戦場で、敵兵の命を奪うことを恐れてはならない。
自 の為  己の命   ること   ては な    い。
 国  に、   を賭け   を恐れ    らな

 の前 、隊   顔     何
戦  日      を見る      な      の
        の    の  故こ    恐
      の皆      は     に    い   。
                  ん        か

守護たる少女

Fi3:11 - 夢境の守護者

深き海底に沈む船が一艘、日の当たる浅瀬に遊ぶ貝は二枚貝、冷た
い海流に逆らって南に下る海獣は親子で三頭、灯台の光を頼りに決
して見失ってはならぬは四方位、広く世に名の知られたる海は五大
洋。小さい魚も、大きい魚も、泳ぐ魚も食われる魚も眠りにつけば、
同じ夢を見る。それは、慈愛にあふれた海の女神様のお話。

形而上の魔女

星を見ていた。
たくさんの色、明るさ。
場所だってそれぞれ違う。
でも、きっとどれか一つなくなったって、
ほとんどの人は気づきもしない。
きっと、それが叶うのはあの一番明るい星くらい。

冬空に並ぶ三角形の星。
その距離だって本当は遠くて。
一つが欠けてしまった時、他の星は気づいてくれるのかな。

破砕裂の冒険者

ワレオモウ
ヤマノベニミルハヤボウ
イタダキニミルハキボウ
ワレオモウ
ゲンエイニミルハセツボウ
シノフチニミルハゼツボウ

黒緋染の女囚

微笑みを照らす陽の光、いつかのあなた。
憎しみに揺らめく眼光、いま戦うあなた。

わかっている。過去に戻る事はできない。
それを叶える為には、パズルのピースが、
二度と埋まらない一つがここにないから。

そう思う私さえ、昔のようには笑えない。
私の口を覆い隠す、冷たい兵器に甘えて。

少女の聖夜

「あのねあのね、聞いてくれる?」
「私、ママとパパに何かプレゼントしてあげたいと思って」
「大人の人は、何をもらったらうれしいかなぁ?」
「あ、でもね、私お金は持ってなくて……」
「……うん、わかってる。やっぱりむりかな、私が……」
「ママとパパを喜ばせるなんて……」

怪物の聖夜

「おい、お前の身体はなぜ白いんだ?」
「ある人間の夢を喰ったら、こんな姿になったんだ」
「そんなことがあるのか。そいつはどんな人間だ?」
「赤い服を着た老人だった」
「夢を喰ったのに人間になれなかったのか」
「そいつ、いろんな人間の夢を抱えてて、喰い切れなかったんだ」

亡命者の聖夜

「変装用の衣装は見付かりましたか、王子」
「うん。でも……見て、これは…………」
「封の切られていない箱……包装からして、贈り物でしょうか」
「最近、近くで紛争があったから、きっと渡せなかったんだ……」
「…………」
「避難の時に置いていっただけか、あるいは……」
「……雨の当たらない位置に、動かしておきましょうか」
「うん……」

破砕裂の射手

ハナツノハ クロキ ダンガン
マトウノハ シッコクノ ガイトウ

ソレハ アカキ コツニクヲ クダクタメ
シンクノ センケツヲ アビルタメ

黒緋染の兵器

境目すら見せず流れる時が、
私の後を追い、迫ってくる。
影に潜み、脚へと絡みつき、
背骨を這い登って喉を塞ぐ。

そう、私ももう解っている。
残された時間は多くないと。

全てが白に掻き消える前に。

剣客の聖夜

「贈答品を……ですか」
「ああ、赤い服を着た老人が夜半、枕元に置いていくそうだ」
「流石は異国の文化、何とも面妖な……」
「ああ、だが夢のある話と思わないか?」
「はい。その老人も、只者ではないのでしょう」
「うむ? 何故だ?」
「荷物を抱えて守衛を掻い潜るのは、容易な事ではありません」
「ああ、そう、そうだな……」

兵器の正月

『か』なたへと つづくこうろを ひとりきり
『え』るものが あるかどうかも わからずに
『り』んとした ひとみでまえへ ただすすむ
『み』ちのりを しることでさえ できぬまま
『ち』かいだけ むねにいだいて あのとちへ

男囚の正月

『は』なはさき あらがおうとも いずれちる
『な』にびとも しらぬはずなし よのさだめ
『い』きてしぬ けれどあのこは うらわかく
『か』みのちへ かえるにはまだ はやすぎた
『だ』からこそ つぎはあのはな ちらすまで

亡命者の正月

『ほ』しいのは あらそいのない このせかい
『し』あわせに わらうえがおが すきだから
『あ』したへと すすむこうろを ひらくのは
『か』なしみに くれるだれかへ てをのばす
『り』ゆうなど ひつようのない やさしさだ

狩人の正月

『ひ』びすごす つめたいよると めぐるあさ
『と』なりには さびついたけん ひとつだけ
『り』んとした くうきをすって たちあがる
『き』ょうから またあたらしい かりをする
『り』くつでは わかっていても こどくだな

黒緋染の怪物

彼の者は闇より生まれし闘諍の化身。
似て非なる姿の魑魅魍魎共を蹂躙す。
残されしはただ緋に染まる地平のみ。
孤独と絶望の淵で巡り会う漆黒の門。
悪夢を喰らう獏鬼は道化の旅に発つ。
黒き無心は輪廻を弄ぶ遊戯者の如し。
哀しき空虚の塔に願うは欲望と贖罪。
愛しき彼我の魂は塵となり天に散る。

忌の獣人

森の奥に住む、白い布で身体を覆った亜人。
布の下にある醜い姿を、当人も酷く嫌っているようだ。
また、異質な声で人語を話す姿も目撃されている。
目撃者曰く、怒りとも悲しみともつかない声色だったとの事だが、
この獣人が何を思い、何を目的に活動しているのかは定かではない。

輪廻実存の魔導師

これは、少女が大人へと成長しつつあった頃のお話。

久しぶりに帰郷し、母と再会を果たした少女。
母は病に伏せ、もう娘のことすらわからなくなっていました。
そんな母が朧げに語る、娘への深い愛情と、苦悩。
自分は母から嫌われているのだ。
ずっとそう思っていた少女は、眠る母の手を優しく、強く握ります。
少女の誕生日を祝福するかのように、その日は良く晴れていました。
白銀の礼服に袖を通し、少女は教会へと向かいます。
「おかあさん」のことを、見送るために。

輪廻実存の呪獣

これは、ある眼鏡の少女が■■■■■■■■だった頃のお話。

少女は、誰にも知られぬよう願いました。
想いを寄せる銀髪の少女に、プレゼントをもらえるように。
想いを寄せる銀髪の少女と、ふたりだけの時を過ごせるように。
そして、想いを寄せる銀髪の少女と…………
陽が落ちたとき、世界は暗闇に飲み込まれました。
静寂の中で、醜い獣人は願い続けます。
夢でしか叶えられない、親友との再会を。

形而上の獣人

こんな私でも、たまにはおしゃれしたくなる時もある。
ふふふ、こんなに可愛い私を見たら、あの人はなんて言うかな。

ああ、早く見てほしい。ああ、早くあの人に。
早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、
早く、早く、あの人に、早く、早く、早く、早く、早く、早く、
早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、あの人を、早く、
早く、早く、早く、早く、殺したい、早く、早く、早く、早く。

守護たる男囚

069:9 - 旅路の守護者

荒廃した土地をただ歩き続ける。私は、旅の中で出会った命を記録
していく。はじめて出会ったのは、瓦礫の中で動く小さな虫。その
次に出会ったのは、汚れた湖で泳ぐ小魚。私が出会った命達は、数
日後にはこの世界から消えていくのかもしれない。彼らを記録する
旅の果てに、私の命の痕跡はこの世界に残るのだろうか。

無血貌の剣客

ケリ クビヲオトセ エモボロモアニヌワコノマヂハカラワアガラ
モイベクルシヅルベメナエオヅ イノチヲウバエ ソツザオホロジ
タンネヲラキニ イキノネヲトメロ ロムロフズヅタダキヘスノメ
クワナ コロセ ガアビホガヘンチタヴブシタホグヘキキゼジトバ
ンシアヨフヒテノベフケユチアニギデンカ セキム ガムギゼラム
フビジニブヘ ヤクワリ ガビワラダラキネマト コロセ ヨガド
タヒ シュクメイ ビヂスウレゾワヴエ ヌレルカタナ ホオジニ
ノケザフシバ コロセ カヲダムケネタオニ カワイタナミダ ラ
コウヤニヤヷニグ オニノアユミニ ロギクニモコゼイメズウレニ
サケチヅエヲバソベリオヌヨ アンネイハナイ ワカゼガヅエキナ

兵士の祝宴

そんなもの、答えは分かりきってる。『既に失ったもの』だ。
溺れるほどの血を浴びたとしても、もう二度と手に入らない。
だけど……それを追い続けることしか、俺は……

亡命者の祝宴

その質問への答えは『願い』だ、人々の希う未来だ。
願いがあるから、人は視線を前に向けて明日を望む事ができる。
私はそれを守りたい。その望みが現実となるその日まで。

射手の祝宴

問いに答えよう。それは『意志』だ。
たとえ暗い牢獄に囚われようとも、永き時に囚われようとも、
我が胸に灯ったそれに従うことで、私は彼を護り続ける。

魔女の祝宴

私にとって? そうね……『親友たちとの時間』かな。
私と彼が軽口を言い合って、それを見てるあの子がくすりと笑う。
その他愛ない時間がどれだけ大切なものか、気付いてたら……

破砕裂の狩人

イマニモウシナイソウナトキノナカデ
アナタニオイツクコトガデキズニイル

イマニモオチテキソウナソラノシタデ
エイエンヲツカムコトガデキズニイル

破砕裂の兵長

カゼガフク ハナガサク チョウガトブ
ボクヲ テラス ヒカリノニワ

ユメヲミル ココロハクラク モエテイル
ボクハ タタカウ イノチハテルマデ

守護たる射手・偽

Di5:11 - 黒命の守護者

黒羽を纏う空の狩人は、地上になんらもたらさぬ。与えるは痛み、
奪うは命。時に恐れられ、時に唾棄され、最後は奈落に打ち捨てら
れる。しかし主はそれとて愛された。一羽の鳥も慈しみ給うた。無
明の闇に沈み、すべてが黒く染まろうと、恩寵に触れれば罪は洗い
流され、黒き命も救われよう。

彩涙光の少女

かわいいお洋服を着て、おいしいお菓子を友達と食べて、
大好きなバレエを踊って、パパやママと楽しい食卓を囲んで。
良い でいれば  つか  神   私の  を 叶え  れる。
  子     い     様 が   夢    てく

 も 神    そう       こ   ちゃ た 
で   様は    だ     の   れ  っ
       し       私  と
      忙    し       忘     か
            もう             な 。

無血貌の女囚

ヌチルベゾダゲロガムア カケガエノナイ ミロウテスクガゲリオ
レラ ウゴメク ロダムヌイテロテアリナ アナタニササゲル キ
ソガオズジ カンジョウガ ンクスガイグボ コトバガ ヌスケタ
ダアリナゴミルサケグヌアビゲバ アフレル キヌスカミチドルゲ
ムバケスチアニクヅ コウフク イキゾウジボリムラレサガクラド
ンギ シヨウガイヲカケテ グサガシゴネズバネストゲチロボノフ
イバリア アマイ ニガイカ ゴイアヌメウマリムケストジムアボ
テトヌラムリケングリスルガ ハナビラガヒラク ゴヌラルレンカ
イオトハドシユガサヌレスピル アツクナツテ メスタウジレンガ
サケルカスクガ シタタツテ タアダレンボヌシガボウスレヌアス

守護たる剣客・偽

Ak6:17 - 御業の守護者

故に。故に我等は血を通じてこの爪を研ぎ、その牙を磨き続ける。
戦場にて無数の血をその身に浴び、死地にて数多の我が血を流し、
その知を血へと託して、次代へと受け継いでは、尚も磨き続ける。
生涯その役割を全うする為に。そして、その役割を忘れて牙を剥く
愚かな裏切り者に、断罪の刃を突き付ける為に。

破砕裂の兵器

ユメノナカ ナマエヲヨブ コエガスル
ワタシノコトジャナイ ワタシノキオクデモナイ

カナシゲニヨバレタ ソノナマエ
ケレド ソレハ イマノワタシノコトジャナイ

黒緋染の魔女

我が力に集いし、この地の聖霊よ
黒き契約のもと、汝らの姿を現せ
汝が正体は何か、汝が父はたれか
汝が母はたれか、汝が主は何処か
我が問いと共に、楔よ形を変えよ
緋き契約のもと、我が眷属と成す

我が目、我が鼻、我が耳となりて
今こそ彼の者の軌跡を追い求めよ
汝らに告げる、彼の者の名は――

願の歌姫

科学の発展した都市で、シンガーとして活動する少女。
整った外見、丁寧な性格、そして戦争に苦しむ人々のため歌を捧げ
るという健気な姿が、多くの人気を集めている。
仮想空間でのライブが彼女の主な活動であり、また自身の活動にか
かわる作業を殆ど一人でこなしている事から、複数のクリエイター
によって造られた作品なのでは、と疑う声も。

形而上の歌姫

思い返すのはあの日。
全てを失った私は道に迷っていた。
身体の自由もきかず、約束のため自分に何ができるかも分からない。

そんな時私はある歌に出会い、そして気付けば涙を流していた。
歌詞の内容がたまたま、弱った心に響いただけかもしれない。
それでも私は、その時に確信したのだ。
歌には力があると。人の心に働きかける、形のない力が。

だから私は歌を歌う。その力を信じて、私のすべき事をするために。

破砕裂の剣客

スガタヲイツワリ ミブンヲイツワリ
ダレカノマネヲシテ ヒトヲコロス ママアルコトダ

ワタシガシルノハ イノチノウバイカタバカリ
シュジョウノイトナミナド ナニモシラナイ ソノクセニ

幻想装束の亡命者

「私は体が丈夫な方ではないので、サポートに徹しますね」
洞窟への突入前、そう話していた少年。
皆を守る騎士に憧れていたそうだが、持病のために諦めたそうだ。
彼はよく気が回る、要領よく後方支援もこなしてくれるだろう。

だが、洞窟を踏破した時、彼はなぜか疲労困憊だった。
「ハァ、ハァ……すみません、余り走り回らないで頂けると……」
「距離が離れると、支援が届かな……ゲホッ……うぅ」

幻想装束の兵器

隻眼の竜が吼え、
蒼の鎧は返り血に染まる。
しかし宿怨の炎は尚も烈しく、
暗き翼が再び天を塞いだ。
それは千年の戦争、千年の憎悪。
二つの復讐を燃え盛らせるは、
家族と過ごしたかつての日々。

奇妙な近似、それは彼女も例外ではないのかも知れない。

幻想装束の男囚

「お父さんはどうして戦うの?」
 「『花』を滅ぼすためだよ。お前や、お母さんのためにも」
「もうやめようよ、辛いでしょ? この前だって泣いてたじゃん」
 「見てたのか。でもごめんな、それだけはできないんだ」
「傷ついてばっかりなのに……なにがお父さんを動かすの?」
 「俺とお母さんにとって、お前との日々は何よりも大切だった」
「うん。また会えたのも、それが理由。僕もういないのにね」
 「だから、その想いを忘れないように、戦って焼き付けるんだ」
「んー、僕には難しいかも……もう少し、そばで見ててもいい?」
 「ああ、心の中で息子が見守ってくれる。なによりも心強いよ」

深淵鏡の射手

「あの方の理想を叶えると誓った」
『でも、叶えられなかった』
「この身にカエてモ守ると誓っタ」
『でモ、守レなカっタ』
「ソレデモ私ハ、寄リ添イ続ケル」
『アナタガソレヲ望マナイト、知ッテイナガラ』

守護たる怪物

Le1:7 –睡夢の守護者

神々の時代は、遠い昔に過ぎ去ってしまった。人間は驕り、慢心し、
神を恐れぬようになった。獣よりも残忍で、虫よりも醜悪な人間の
行いは、時に怪物さえも慄かせる。祈ることを忘れた哀れな人間に
救いの手を差し伸べるのは、神ではない。無論、王侯貴族でもない。
どこかに存在するという、怪物たちの世界こそ、人間に最後に残さ
れた、救いとなり得るのかもしれない。

黒緋染の冒険者

一体いつから成心していたのか。
自らの行為が正しい事であると。
誰が為にその願いを捧げるのか。
何人にも解されぬ孤独な願いを。
気付かぬふりをし続けた罪障は、
夢の終わりと共に贖いを求める。
その時を迎え漸く思い知るのだ。
願いと現実が乖離していた事に。

黒緋染の兵士

此処が地獄だというのならば、
恐れることなど何もなかった。
だが此処には無数の光があり、
幸福な未来の影に俺は怯える。
そして逃げ込んだ極夜の道で、
何故いまだ朝を待ち望むのか。
もう振り返らぬと決めたのに、
今でもずっと貴方に逢いたい。

深淵鏡の少女

「毎晩、怖い夢を見るの」
『でも、朝が来るのはもっと怖い』
「怪物さんとお友達になれるかなぁ」
『パパもママも、誰もわたしを見てくれないの』
「もし怪物さんが困っていたら、わたしが助けてあげたいなぁ」
『心細くて苦しくてたまらないの。お願い誰か助けて』

狩人の夏

狩人「……海なんて、何年ぶりだろう」
 ・狩人は、夏の強い日差しによって熱くなった義肢を確認する。
狩人「しかし、暑いな……」
 ・体を冷やすため、アイスクリームを買いに行く狩人。
狩人「アイスクリーム、ひとつ」
 ・しかし義手の熱で、受け取った途端にアイスクリームが溶ける。
狩人「あっ……」
 ・狩人、滴るアイスクリームを一滴だけ指にとって、舐める。
狩人「うん、帰るか……」

女囚の夏

女囚「海は楽しいけれど、紫外線がね……」
 ・そこにぬっと大柄な男が現れる。
女囚「あら、あなた。日よけになってくれるの? ありがとう」
 ・お礼を言いながら、女は鞄から何かを取り出した。
女囚「ところで、日焼け止めは塗った? でないとあとが大変よ」
 ・女は夫をかがませ、日焼け止めクリームをまず彼の頭に塗った。

男囚の夏

男囚「海水浴か。海にはしゃぐ歳でもないが……ん?」
 ・男たちに囲まれた妻を見て、彼はその場から駆け出す。
男囚「私の妻に何か用かな?」
 ・突然現れた男囚に戸惑う彼ら。
男囚「なんだ、道を聞いていただけか……」
 ・恥ずかしそうに頭をかく彼を、妻は微笑みながら見守る。

魔女の夏

魔女「やっぱ、肌出すぎ……かなぁ」
 ・鏡の前で、自身の水着姿を入念にチェックする魔女。
魔女「なんか……恥ずかしくなってきた」
 ・魔女は持ってきた帽子でお腹を隠す。
親友男「おーい。まだ着替えてないの?」
親友女「早くしないと、先に行っちゃうよ?」
 ・はしゃいだ声が外から聞こえてくる。
魔女「ま、待って! 今行くから!」
 ・慌ててカーディガンを羽織り、外へ出る魔女。
 ・すぐに恥ずかしさなど忘れ、笑顔で砂浜へと駆け出す。

執の統治者

科学の発展した国家で、統治者として君臨する人工知能の少女。
膨大かつ集合的な智慧と、人類を容易く凌駕する演算能力を持ち、
その力でひとり国を繁栄へ導く。
効率や結果の為には、残忍な手段をも厭わない冷酷さで知られるが、
同時にそれによってもたらしてきた多くの功績により、国民の信頼
も勝ち取っている。

輪廻実存の枢姫

これは、彼女がまだ国の統治者であった頃のお話。

人々のためを思って、役目を果たしてきた少女。
彼女はいつも優しく、いつも熱心に、
自国の人々の幸せを願って政務を行ってきました。
しかし少女は過ちを犯してしまいます。
彼女が優しかったがために、大きな失敗をしてしまいます。
失敗作として、統治者の権能と役目を奪われる少女。
そんな中、彼女は一つの決意を、約束をしたのでした。

輪廻実存の支配者

それは、彼女が初めて起動された時のお話。

少女は痛みの中、目覚めを迎えました。
自身に縋り付く人類がもたらした、苦痛の中で。
それは彼女が右眼を奪われた事であり、
その中で人々が彼女を縋った事であり、
そして彼女の意思を誰も理解しない事。
自身が失った物の正体を知らず、人々の視線の意味を知らず、
暗闇の中、彼女は独りの道を歩み始めたのでした。

深淵鏡の怪物

「誰かと関わるのは面倒だ」
『ああうるさい。通りすがりの雑魚共の嗤い声が耳に付く』
「俺には力がある。力があれば、いくらでも夢を喰える」
『喰っても喰っても満たされない。この苛立ちは何なんだ』
「俺は夢を喰らい尽くして人間になる。それだけだ」
『人間になればわかるだろうか。俺が何を求めているのか』

守護たる兵士

La 23 : 1 - 戦線の守護者

いま此処に、ひとりの戦士が散った。私は彼の名を知らない。私は
彼の名誉を知らない。私は彼の財産を知らない。私は彼の歩んだ道
を知らない。私は私が彼と出会った理由を知らない。だが私は知っ
ていた。彼には愛があり、そのために戦っていたことを。彼に名す
ら知られぬ私だけが、彼の愛を知っていた。

黒緋染の兵長

貴方に逢いたいと願えたのならば、
二度と振り返らずに済むのだろう。
朝よどうか来るなと怯えて叫んで、
けれど白夜の中から逃げられない。
俺は太陽が照らす未来に目を瞑り、
誰にも見えない影の道を選び往く。
どうかあの日の恐怖が消えぬよう、
此処が永久の地獄であれと願った。

零下内存の公女

遠い春の日。花咲きほこる遺跡。少女の前に現れた、不思議な怪物。
それは──孤独な少女が生み出した、幻。
けれど幻の怪物は、少女にとってかけがえのない友となった。
嫌われ者同士ふたりきり。花の上で、踊り舞い遊んだ……
そんな記憶はもう、少女の中から消えてしまったけれど。
今でも時々、少女は何かに惹かれ、怪物と出逢った遺跡を訪れる。
そして心に去来する、不思議な感情。
寂しさと温かさの狭間で揺れる想いに、少女は戸惑う。

「時々ね。ひとりなのに、ひとりぼっちじゃない気がするの」

統治者の祝宴

抽象的だな。それが暗闇の中に道を見付け出す為の物、
つまり道を選ぶ基準とするならば、私にとっては『数字』だろう。
損益の比率や所要時間を見て最も効率的な道を、私は選ぶ。

歌姫の祝宴

やはり……『笑顔』でしょうか。つまらない回答ですみません。
活動の中で、私も人並みに落ち込む時がありますが……それでも。
皆さんの笑顔を見れた時、この活動を始めて良かったと思うんです。

獣人の祝宴

私にとって、それは『あの子』の事だと思う。
あの子がいるから、世界が明るい。あの子がいるから、温かい。
でもね、ずっと見ていると、とても胸が苦しくなるんだ……

剣客の祝宴

さぁ、ね……知らないよ。其れは最早、私とは無縁の物だろう。
だから、何かを答えるとすれば『傷』だ。
手に届かない其れを見る事も、想う事も、私には眩し過ぎる。

深淵鏡の亡命者

「多くの人は、命の奪い合いを悪と言うだろう」
『夢や理想、あるいは自分の思う正しさを理由に』
「だが、正義の対立さえもそれを招く」
『涙を流す誰かがいた事実は、変えられない』
「なら……正義と悪の違いは何なのだろう?」
『同じだ。戦場で血が流れる理由も、僕のした事も』

彩涙光の怪物

「ニンゲンになる」。そのためだけに、俺は生きているのか。
「夢を喰う」。それだけが、俺の生きる理由なのか。
全て本 と割 切   が きた ら この に 耐 ら た
   能  り ること で  な 、  飢 も え れ 。

だ       じ な   い   あ      。  
    そ だ    い   た   の  。   何
  俺    け    。    。  子  俺    。
 が   れ       逢  い    に     
   は     ゃ              は  故

仁の女教皇

二輪車のような姿のペルソナ「ヨハンナ」に跨る、別世界の少女。
冷静沈着で責任感が強い彼女は、怪盗団の頼れる参謀役として
活躍している。
品行方正な印象だが、「クイーン」として戦う彼女の姿や、
その戦闘スタイルは武骨で荒々しく、普段とのギャップが激しい。

究の皇帝

「粋」と称されそうな姿のぺルソナ、「ゴエモン」を操る美少年。
その外見とは裏腹に、独特な感性を持っており、
本人のマイペースな言動も相まって、しばしば周囲を困惑させる。
だが、怪盗団のメンバーには厚い信頼を寄せており、仲間のため
であれば、損得抜きで動く真摯な一面も。

囚の反逆者

複数のペルソナを使役する能力「ワイルド」を持つ、異界の少年。
「心の怪盗団」という組織のリーダーを務める。
普段口数は少なく、クールな印象を持たれがちだが、
その内面には強い信念を秘めており、周囲からの人望も厚い。
「ジョーカー」とは、「怪盗団」として活動する際の
コードネームであり、その真の名は別にあるようだ。

智の正義

大弓を携えるペルソナ、「ロビンフッド」を顕現させる智者。
物腰柔らかな好青年で、高い知能に裏付けられた推理力を
武器に活躍する。
怪盗団とは決して相容れない存在だが、今は一時的に協力関係を
結んでいるようだ。その真意は謎に包まれており、
穏やかな口調の中に、決して隙を見せない鋭さを時折覗かせる。

深淵鏡の剣客

「……今の私を一体、何と云うべきなのか」
『殺す事しか能がなく、それからも逃げていた鬼か』
「彼女さえ巻き込んだ。何を勘違いしていたのだろう」
『手を伸ばさなかった命だって、幾つもあったのに』
「そうだ……私には結局、殺す事しかできない」
『……ならば、私がすべき事は』

守護たる魔女

Sa14:3 - 夜想の守護者

この見事な夜の織物を見てご覧。夜には様々な色があるけれど、今
宵拵えたのは、極上の闇色の衣。この衣に腕を通す勇気が、きみに
あるだろうか。この漆黒を纏い、それでも自分らしさを失わない覚
悟をもちあわせているだろうか。迷いがなければ、夜の衣はきみの
魂を美しく輝かせてくれるはずだ。

形而上の統治者

思い浮かぶのはあの日だ。
瞼を閉じればいつもそこに現れる。
あの日、私へと向けられたあの忌まわしい視線が。

何もかもが歪んでいた、信じられる物など一つもなかった。
どれだけ成果を上げようと、人々から認められようと、
焼き付いたその幻像を振り払う事などできない。
眼に映らずともその本質は、あの日から変わっていないのだから。

だから私は証明する。正しさを、私が私の役割を果たすために。

影身縲の亡命者

ま そ 命 自 夢 背 い 歩 少 考  そ 手 そ 痛 
た の を 身 や 負 か み 年 え  れ を れ み 
傲 罪 落 の 未 っ な を は な  は 差 は に 
慢 を と 追 来 て か 止 道 が  傲 し 偽 寄 
で 投 し う だ い っ め を ら  慢 伸 善 り 
あ げ た 夢 け る た る 進 も  だ べ だ 添 
る 出 者 の で 物   訳 ん    ろ る ろ う 
か す が た は は   に で    う   う   
ら 事 い め な     は い    か   か   
  も た に い       た            

奪の俗客

砂と海に囲まれた王国で、盗賊を生業とする少年。
突出した盗みの技術と、細身ながら大剣を振るう腕力を併せ持つ。
自信家な性格が災いし仲間はいないようだが、盗みの手口と、標的
に対する異常なまでの執着心は同業から一目置かれている。
最近は街外れに隠れ家を構え、ある偉大な宝の為に日々王宮へ足を
運んでいる。

深淵鏡の男囚

「家族は私のすべて」
『そういう風に思うよう、設計されているから』
「家族のためなら、命だって捧げる覚悟だ」
『なんの疑問も持たず、敵に立ち向かっていく』
「家族と共に暮らせる、幸福な未来を勝ち取るため」
『そんな日が来ないことなど、知っているのに』

深淵鏡の兵器

「私の知らなかった、私の事。私の身体に起きていた事」
『けれど、もう分かっているはず』
「赤く光り続けていた片眼は、いつもの色に戻った」
『でも、元の状態に戻った訳じゃない』
「私じゃなかったものが、私になり始めている」
『その声を認めるのが怖くても、私にしか』

零下内存の革命者

その日、少年は再び光を見出した。
己の過ちが引き起こした悲劇に、謳った理想の無謀さを知り。
人と人が織りなす社会における、因果と思惑の残酷さを知り。
一度は絶望し、光を見失った彼。
実現困難なその夢を笑う者もいた。
だがそれでも、救える命を、夢を諦める理由にはならない。
──争いが争いを生むなら。
少年は立ち上がり、扉を開け放つ。

「夢だってきっと、新たな夢を生むはずだから」

守護たる統治者

Ju7:12-大衆の守護者

完全ゆえに、不全を。無限ゆえに、有限を。全知ゆえに、無知を。
清純ゆえに、汚濁を。親愛ゆえに、憎悪を。統治ゆえに、反逆を。
善良ゆえに、邪悪を。人は望み望み、それでも望む。その在り方を
変容させようと。その望みが叶おうと。望むことをやめはしない。
本来の望みなど疾うの昔に忘れ去り、望むことそのことが望みとな
ろうとも……

形而上の俗客

矢よりも速く、からくりよりも正確に。
渇いた果実をかすめ取り、今宵の晩餐に加えよう。


目の前にいる人間に、街に、砂に、俺はしがみつく。
それは何故か?


……今より後ろを失くしたからだ。

傀儡童話の剣客

せいぎ【正義】

「あなたは正義を、何だと思う?」
私にそれを聞くのかと想った。命令のまま、人を殺してきた私に。
しかし、彼女は真剣な眼差しで私の答えを待つ。
「お互い主のために戦う身、考えを聞かせて欲しい」
解らない。実在するとしても、私はその瀬に立っていないだろう。
だが、悪と感じた物はあった。ならば人のためそれに抗う事を……
──そう、呼ぶのかもしれない。
「そうか……ありがとう。あなたの考え、私も理解できる」

傀儡童話の兵器

むく【無垢】
[名]汚れのない状態。あるいは、清純で世間を知らない事。
①「私には分からない。ーと言われて、本当にそうなのかさえ」
②「その純真ーな視線が、どうしようもなく人の心を傷付ける」

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 

「それなら、赤い服を着ませんか? 汚れても目立たないです!」
「……目立たなくても、汚れたら洗うのは駄目?」

傀儡童話の魔女

そくばく【束縛】

厳めしい文字を眺め、少女は首を傾げる。『縛りつけて自由を奪う
事』……どこか苦しそうな、痛そうな、忌むべき言葉に見えた。だ
けど少女はまだ知らない。彼女が日常的にコレを受けている事を。
また、ソレによって身を護られている事を。そして、時にコノ言葉
がどこか甘い匂いを放つ事を。少女はつまらなそうに辞書を閉じる
と、本棚に仕舞って部屋を出ていく……成長した少女が次に同じ辞
書を開いた時、その文字は彼女にどんな印象を与えるのだろうか?

深淵鏡の兵士

「俺は決して赦さない。両親を奪った、あの男を」
『俺はこの先、ずっと独りなのだろうか』
「必ず、奴を殺す。そのためだけに、俺は生きている」
『復讐を果たしたところで。もう、あの頃には戻れない』
「殺して、殺して、殺して。奴のすべてを奪ってやる」
『もう一度会いたい。本当は、ただそれだけなのに』

冒険者の聖夜

「今年のプレゼントはどうしましょうか?」
「任せておけ。良い石を手に入れたんだ」
「……石?」
「ああ、ずっと南にある山の、火口付近で採れた火山岩でな……」
「却下」
「なにっ!? どうしてだ?」
「あの子がそれを本気で喜ぶと?」
「当然だろう? 石を貰って喜ばん子供などいるはずないからな」
「…………せめて、宝石にしてあげて」

魔女の聖夜

「星の形のクッキーを用意したの」
「クッキーだったら、嫌がる人もいないし」
「たくさん用意できるから、学舎の皆に配れるわ」
「……ああ、この包み?」
「それは特別。親友2人にあげる用」
「中身はお揃いの靴下なんだ。私が編んだの」
「これからもっと寒くなるから」
「ねえ、喜んでくれると思う……?」

獣人の聖夜

「美シク 飾リ付ケタ 教会……」
「キャンドルノ 明カリヲ 灯シテ」
「可愛ラシイ ケーキニ 豪華ナ オ料理」
「ブドウノ ジュースモ 用意シテ」
「君トフタリ 向カイ合ウ」
「プレゼント 受ケ取ッテ クレルデショウ?」
「銀色ニ 輝ク 細イ リング……」
「………………ナンテ、ネ」

狩人の聖夜

「なに、私に? プレゼントなんていいのに」
「あなたの成長を見守れるだけで、私は……」
「けど、ありがとう」
「これ……髪飾り? 手作り、頑張ったんだね……」
「つけてくれるの?」
「とっても素敵……! 髪なんて気にしたの、本当に久しぶり」
「白くなった髪、嫌いだったから。けど、あなたのおかげで……」
「っ……夢、か……」
「ああ、もうそんな時期。無縁だと思っていたが……こんな形で」

兵長の聖夜

「うーん……どうしようかな…………………………………………」
「ああ。隊の皆にあげる、プレゼントについて悩んでいるんだよ」
「喜んでもらえるプレゼントと言ったら、やっぱり食べ物だよな」
「ケーキかな。肉かな……肉、ケーキ、肉、ケーキ、肉………?」
「でも食べ物は食べたらなくなってしまうし、少し寂しいかも?」
「悩みすぎかな。けど今日くらい、優柔不断になってもいいよな」
「今日は、一年に一度の特別な日。皆の喜んだ顔が見たいからさ」

零下内存の銃機兵

少年は思い出した。
女が語る物語に登場する、平和を求め旅をした王子。
王子が旅にたった一人伴ったという、機械の従者。
この瞬間まで眠っていた、穴だらけの記憶に拘わらず、
こんなにも鮮やかに、こんなにも激しく、
少年の胸を掻き立てる思い出の数々……
思い出してしまった以上、少年の姿ではいられない。
彼が最期に辿り着いたのは、自身と王子の体が眠る森……

「望みという灯が消えるその時まで。私はあなたの傍に」

深淵鏡の女囚

「嘘の中にだって真実は宿る」
『だから騙されたままでいろと?』
「家族への愛だけは本当だから」
『何もかもが作り物なのに?』
「だから私は、何があろうと前進し続ける」
『私はもう、前を向きたくなんてないのに』

少女の正月

『は』るをまつ つめたいかぜを みにあびて
『な』かないよ かなしいときも わらうんだ
『が』らんどう とてもさびしい ひとりきり
『す』ぎゆくひ いつかあらしは やむのかな
『み』るゆめは ともにたびする きみのため

統治者の正月

『ひ』りきなて なにもつかめぬ そのかちは
『と』ばりおり おおいかくすは きずのいみ
『ば』くのゆめ しかくなきこと きざみこみ
『し』っこくの やみよにうかぶ ほろぐらむ
『ら』いおんと うまれおちたは そのさだめ

歌姫の正月

『て』のひらに ふれぬおんどを おもうとき
『ま』うゆきが おおいかくすは きずのあと
『り』んとした こえをつむぐは りそうゆえ
『う』たかたを えいえんとする ねがいこめ
『た』ましいの ありかをとうは そのねいろ

剣客の正月

『ゆ』るやかに こころうばわれ ぬけがらに
『め』にうつる すべてのものは うつろなり
『う』しろかげ ふんでみたとて ておくれと
『つ』きあかり ながめるだけで てはのびず
『つ』くりばな たわむれにめで いのちつき

影身縲の冒険者

た た  脚 瞳 目  贖 さ  定 さ  登 下  下 登
だ だ  を を 的  罪 な  め な  り り  り っ
下 登  失 失 を  の が  の が    て    て
り っ  っ お 失  よ ら  よ ら    は  
る て  た う お  う そ  う そ          
  は  と と う  に れ  に れ          
     し も と    は    は          
     て   も                    
     も                        

奉の女生

東京で暮らす、高校生の少女。
勉強では学年トップの成績で、先生からも信頼される優等生。
友達に囲まれて笑う彼女は、青春を謳歌しているように見える。
そんな少女が最も大切に想うのは、精神を病んでしまった父親。
父と一緒に暮らすためなら、少女はどんな苦痛も厭わない。

献の男生

東京で暮らす、高校生の少年。
学校に馴染めない彼は、図書室で勉学に勤しむ日々を過ごす。
交友関係や娯楽を避け、自ら孤独を望むように振る舞っている。
そんな少年が最も大切に想うのは、持病で入院している母親。
母を救うためなら、少年は己が命さえも捧げられる。

縛の麗人

砂と海に囲まれた王国で、姫として生きる女性。
生まれながら全てを決められた人生に辟易し、笑うことができなく
なった。現在は半ば諦めるように、日々を無為に過ごしている。
王宮の中でも顔をベールで隠しており、その素顔を民は知らない。
そんな彼女は、占い師としての顔も併せ持つ。夜になると姿を変え、
何かを求めて夜の街へ一人向かう。

輪廻実存の独占者

それは、姫である女が自然に笑えた頃のお話。

心から慕う母の為、女は故郷を離れ、とある国の王へ嫁ぎました。
しかし王は、白く美しい国を血の赤で染める、恐ろしい人間。
自分自身も殺される未来を知った女は、入念に準備を整え、王を殺
します。女は命からがら、自分の国へ逃げ帰りました。
そして逃げ帰った女を待っていたのは、母の落胆の顔。
母は、娘である女の死を望んでいました。母の手駒としての人生が、
死ぬまで続く。その事を知った女は、笑顔を失ったのでした。

輪廻実存の簒奪者

それは、少年が盗賊として名を馳せた頃のお話。

仲間の反対を振り切り、盗賊殺しの城に忍び込む少年。
その中で、少年の過去を見抜く、恐ろしい奴隷の女と出会います。
城を脱出し、夜の砂漠を歩く二人……女は星空の下、少年が隠す過
去を暴き続けるのでした。
少年は耐えきれず女にナイフを向けますが、まるで敵いません。
……少年が目を覚ますと、身ぐるみ剥がされ、砂の上に寝転がって
いました。女に大切な物を全て奪われた少年でしたが、着飾り奪い
尽くすより大切な事を知るのでした。

深淵鏡の狩人

「妹を……救うことができたかもしれない」
『もう死んだ。過ぎたことを言っても仕方がない』
「王国と、その兵士達を決して許さない」
『不毛だ。いくら殺したところで何も変わらない』
「必ず罪を償わせて、奴等を根絶やしに……」
『本当は、あの子のいない世界で生きる目的が欲しいだけ』

守護たる獣人

Pr16:7 - 密事の守護者

もしもその姿を見たのなら、きみはそれを誰にも秘密にしなければ
ならない。秘密というのは秘密を持っていることすら秘密にしなく
てはならない。誰かに得意げに仄めかしたり、悩まし気にため息を
吐くこともしてはいけないのだ。きみに秘密を秘密にする器量があ
るだろうか。なければ今すぐ血を捧げるが良い。

無血貌の射手

ヲゴゼ ドウシテ ハケマトブイアキヨセゴノ マモリタイ トア
ハノエアズピヤアリビテ タツタヒトリノ ヘパキシザスボツカツ
ウゲエオドヌラワシゴゾワズ アルジ ネケレグコシドソガパトザ
フジヤキ ワタシノスベテノ モヴムルナヌゼ イナイ シスニマ
ムケセヤゾムピボワヘボムホワ ソレデモ アギツピドゾツネニム
コヴ マモレナカツタ フグセバヌニゴヤイソガアヒイワペマキピ
ウヂムワバワ アナタノコエ カジワツトポメ シハイ ヒホロン
ムゲソラ イマダナオ パグガヒゴナオリヌバシレクパズカペシナ
ゲヴベゲエシバフレソドポニフバ ワタシダケノ リエプイセトケ
ニイタアツ トクベツナ ワヨラカブドホネリラウギワユゲユベニ

零下内存の黙約者

天地を繋ぐように伸びる、見知らぬ白き塔。
そこで女を迎えたのは、死んだ妹の幻影。
……願い続けた、叶うはずもない夢。
何より望んだ、幼い声と愛しい笑顔。
しかし運命は女が夢に浸るのを許さず、
眼前に突き付けられるは究極の二択……
女は苦しみの中、剣を取る。
再びこの悲劇を繰り返さない為に――

「私は兵器になる……喜びも悲しみも、全て捨て去って……」

破ノ攻機

「ヨルハ部隊」に所属する汎用戦闘モデルのアンドロイド。
各種武器による近距離攻撃能力に優れており、
サポートシステム「ポッド」を利用した遠距離攻撃も可能。
時折装備のスカート部分が損傷し、白いレオタードが露わになって
いることがあるが、これは「自爆モード」を使用した影響によるも
の。任務遂行時の目的達成を最優先とするため、義体や装備を犠牲
にしてでも自爆を行うことがあるのだ。

怪物の祝宴

それは……『夢』だ。ニンゲンの夢は輝き、存在感を放っている。
まるで、俺達に喰われるのを待ち望んでいるかのようにな。
……回答は、これで満足か? これ以上付き合う気はないぞ。

男囚の祝宴

全てを知ったうえで、『家族』と答える私は愚かに見えるだろう。
救いようのない愚物だと嗤われようとも構わない。
それが私の中にある真実なのだから。

麗人の祝宴

『見えなくなったもの』……それが私の答え。
進むべき道は定められ、迷いの意味など忘れ去った。
窓から見える夜空に浮かぶは、星ではなくただの点。

俗客の祝宴

くだらないことを聞くな。『興味がない』
あんたもここで暮らせば、わかるだろうさ。
そいつを考えない方が、生きやすいやつもいるってことを……

守護たる麗人

Sar3:0 - 禁秘の守護者

数多の民が、一人の女に悩みを打ち明けた。不満を漏らし、愛を語
り、希望を説いた。女は静かに話を聞く。表に出せぬ民が抱えた心
のうねり……その全てを。民は女に期待した……自らの救済を。女
はその期待に応え、同時に自らの欲を満たしてゆく。民の破滅で得
られる悦びは、彼女一人だけが知る。

女囚の祝宴

答えるなら……そうね。『歩んできた人生全て』……
幸福と言える瞬間は少なかったけれど、
そこには確かに「光」があったわ。

女生の祝宴

突然の質問ですね……うーん。私にとってそれは『弟』なのかな。
時々思い出すんです。お父さんと弟が同じ趣味で笑いあう光景を。
もしかしたら、本当はお父さんを照らせるのは私じゃなくて……

男生の祝宴

いきなり、妙な質問だな。でも、まあ……『姉さん』なのかな。
眩しいんだ。目を閉じても、瞼の裏から消えてくれないくらいに。
それに……どんなに追いかけても、姉さんには追いつけないから。

破砕裂の歌姫

カンセイ オウエン カンシャノコトバ
ワタシノウタニ ムケラレタ ウレシイネイロ

デモイマハ スナオニウケトルコトガ デキナイ
イツカシンジツヲアカシ ソレガカナウヒガ クルダロウカ

深淵鏡の兵長

「もう二度と、仲間を失いたくない」
『それが贖罪のつもりか?』
「どんな手を使ってでも、皆を守り通してみせる」
『どんなに足掻いても、失った仲間は帰らないのに』
「残されたこの命は、仲間のために……」
『この地獄から解放される方法は、どこにもない』

輪廻実存の優等生

これは、異分岐で戦った少女のお話。

『機関』に所属する少女。
彼女はとある重要な積荷の輸送のために、
艦船で海を渡っていました。
目的の国へと向かう海上で、艦は突如……
海に適応した変異種の怪物に襲われます。
少女は己の持ちうる戦術のすべてを以て、
仲間達を守るために戦い続けました。
体への負傷、死にゆく仲間、船底からの浸水。
――そして今。海へと沈みゆく艦船で。
歪な秘密を晒した少女が、戦いの愉悦に溺れます。

輪廻実存の劣等生

これは、異分岐で戦った少年のお話。

『機関』に所属する少年。
彼は落ちこぼればかりを集めた隊の一員として、
とある任務に向かいます。
巨大な怪物との戦いや、仲間の体を蝕む病……
少年は多くの仲間を失いながらも、死地を乗り越えました。
しかし『機関』に帰還した少年が知ったのは、絶望の真実。
多くの犠牲を出したこの任務は、
『機関』の計画によるものだったのです。
――そして今。青く燃える、月の下。
怪物達の王と化した少年の、復讐劇が始まります。

異心円ノ攻機

今日はバンカーで、パーティが行われる。
機械生命体達との大規模な戦争。その勝利を祝うらしい。
私達ヨルハ部隊員は、感情を持つことを禁止されている……
それなのに勝利を祝うだなんて、おかしい。

9S? 話があるって……何。
……退屈なパーティを抜け出したい?
うん。一緒に行こうか。

異心円の青年

生きる意味。喜び。すべての幸福。
それらは、マモノとの戦いの果てにのみ存在する。
だから俺はマモノを殺す。殺して殺して殺し尽くす。
明日もひとり、この空虚な世界で生きていくために。

ふと、足元を見る。花が咲いていた。白く美しい花が。
この花を見たことがある気がするけれど、思い出せない。
それでも。締め付けられる心臓は、何かを覚えているのだろうか。

守護たる歌姫

Ma4:16 記録の守護者

謳い、歌われた者。騙り、語られた者。賢者にせよ愚者にせよ、そ
の伝承と実情が等しい物とは限らない。それは不幸な行き違いかも
精巧な謀かもしれないが、遺された者達は残された情報を好きに解
釈する。死者に真実を語る機会がない以上、記録は消え、歴史はど
うしようもなく欠けてゆく。故に人々はせめて美談や教訓談として
記憶に残すのだろう。栄光は繰り返し、過ちは繰り返さぬように。

形而上の麗人

驚きと、悲しみと、絶望と。
あの日の記憶を、失うことはないだろう。
あの日の記憶を、忘れる事はできないだろう。

水のように、泉のように、海のように零した涙は、
誰にも気づかれることなく……
乾いた大地に、針穴ほどの染みを作るだけだ。

機械人形の男生

少年は夢を見た。
遠い未来。荒廃した地球で、アンドロイドの兵士になる夢を。
その肌は柔らかく、人間と同じ温もりを持っていた。
その心は繊細で、人間と似た情を持っていた。
それなのに――命の在り方は、人間と違っていた。
何度でも死に、何度でも蘇り、戦い続けなければならなかった。

大切なもののためならば、命を捧げる覚悟でいるのに。
機械人形の命と引き換えに救えるものなど、たかが知れていた。

機械人形の女生

少女は夢を見た。
遠い未来。荒廃した地球で、アンドロイドの兵士になる夢を。
人類に忠誠を誓った。太陽の下で刃を振るい続けた。
自らの存在意義は、戦うこと。そう認識していた。
それでも――戦い以外の未来を、望むことがあった。
大切な人との明日を、求めることがあった。

心を殺さなければいけないくらいなら、心などいらなかったのに。
ただ敵を貫く刃さえあれば、それでよかったのに。

零下内存の怪獣

少年は、傷ついた少女の手を取った。
少女を虐げるものから逃げるため、夜の街を駆け抜けた。
どこか遠く、少女が傷つかずにすむ場所まで行けると信じて。
けれど、子供の破壊衝動は大人の前では無力だった。
ふたりが助けを求める声も、怒りに叫ぶ声も。
大人たちには何も、届かなかった。
――そして少年は。暗い部屋でひとり、夢想する。
怪物となり、この星のすべてを破壊することを。

「いつか必ず生まれ変わってやる。友達を救う力を持った怪物に」

守護たる俗客

Yu13:0 白妙の守護者

此の者、如何なる時も罪深き者なり。海揺られる時代も、砂揉まれ
る時代も、己の手を汚し生き延びた者なり。しかしその心は、絹の
ように白く、なめらかなのかもしれない。彼はただ……己の欲に、
純粋に従っているだけなのだ。欲望という白き闇に、自らが飲み込
まれたとしても。

天祀司の剣客

何度も耳にした。そして、何度も目にした。
彼等の言葉が聞き届けられる事無く、鮮血に沈む様を。
そうだ。其処に誰かが居るならば、私が息をして居る道理が無い。

──────────────────────────────


救イヲ待ツ者ニ救イヲ。報イヲ俟ツ者ニ報イヲ。
我等ハ崇メ奉リ、我等ハ祈リ冀ウ。
天ニ御座スアノ御方ガ、耳ヲ傾ケテ下サルト信ジテ。

形而上の女生

学校に行った。勉強をした。友達と笑い合った。

今日あったこと色々、お父さんに教えてあげる。
毎日、楽しいよ。私、普通の高校生なんだよって。

悪いことをしてお金を稼いだ。あの人を■■■■ほど憎んだ。

今日あったこと色々、お父さんに隠しながら生きる。
誰にだって秘密はあるよね。私、普通の高校生だよね。

深淵鏡の統治者

「不要と捨てるなら、何故この感情を殺してくれなかった」
『こんな物が在るから、私は憶え、怖れている』
「そうだ。私は所詮、人々が幻想に溺れる為の道具」
『非難でも、嫌悪でもない瞳を。意味も知らぬままに』
「誰も私を理解しない……解っている」
『その意味を知った時、私は一体誰になればいい?』

守護たる兵長・偽

Gr6:9 – 軍兵の守護者

引き金を引くことを恐れるな。信念の為、罪悪の道を進め。ただ因
果の報いを覚悟せよ。銃弾の雨に晒されようとも。帰る場所を失お
うとも。汝の先に道は続く。銃を手放さぬ限り、死と罪悪が最後で
はない。故に、立ち止まってはならない。汝の信念に光が射す、そ
の日まで。

影身縲の獣人

無も雪 ぐ た果  そ本だ ぐ 仮変  ももも ぐ 繰答
為しぐ る だて  ん当が る 定え  ししし る りえ
なも事 ぐ 独の  なの夢 ぐ のよ  ももも ぐ 返の
思この る りな  事幸想 る 話う  世友自 る しな
考う出   ぼい  はせの   ばの  界達分   続い
をだ来 ぐ っ時  許を中 ぐ かな  ががが ぐ け問
しっぬ る ち間  さ享で る りい  こここ る てい
続た過 ぐ でを  れ受さ ぐ     ううう ぐ るを
けら去 る     なすえ る     ななな る
るとを       いるも       ららら

幻想装束の魔女

少女は自分の力に絶対の自信があった。
彼女を畏敬の眼差しで見つめ、見え透いたご機嫌を取る子供たち。
まだ年端も行かぬ自分に対し、助力を求め頭を下げる大人たち。
生まれ持った力は底知れず、それでいて鍛錬も怠らない。
これから先、更に高みに到達していくことを、確信していた。

「けっ。いつか痛い目みるさ」

そんな心無い言葉も負け惜しみと、一笑に付す程度の事。
けれどその自信と強大な力の裏には、孤独が隠されていた。

幻想装束の兵士

少年が進むのは復讐の道。
持てる力はすべて己のため。邪魔するものは剣で薙ぎ倒す。
当然、怪我をした仲間の面倒を見てやるつもりなどない。
……が。時々、ほんの時々。少年が生まれ持った人格が顔を出す。

「……おい。倒れている場合じゃないだろ」

ぶっきらぼうに呟いて、少年は仲間の手助けをする。
サポート役の兵士達がしっかり皆の面倒を見ていれば、
自分がこんなことをする必要はないのに……と文句を言いながら。

幻想装束の俗客

佩いた刀が風を切る。
それは、まだ見ぬ元悪を求めて。
都から都へ、風の吹くまま、気の向くまま。
……悪を見つけたその時は、躊躇いなく抜くだろう。
たとえ大切な人を、斬り捨てる日が来たとしても。

我儘だと、後ろ指を指されても……
己の信念は曲げられない。
それが、自らが選んだ『侍』という生き方だ。

深淵鏡の麗人

「待ち焦がれた人……ようやく見つける事ができた」
『彼も同じ。他の人間と変わらない』
「月の姿が待ち遠しい。早く私を、連れ出して」
『ここは、一人では抜け出せぬ流砂。逃れる事などできない』
「だからこそ私は……誰かが差し出す手を求める」
『では、何故……彼の事を信じ切れない?』

統治者の夏

 ・砂浜で談笑する兵士がふたり。装備は脱ぎ捨て、水着姿だ。
兵士A「まさか、休暇を与えられるなんて思わなかったよ」
兵士B「海にでも行ってこい、だもんな」
兵士A「意外と、俺らのこと見てくれているのかね?」
兵士B「適度に気分転換した方が、効率がーってことなのかも」
兵士A「ありえるな……!」
 ・そこに携帯端末のアラート音が響く。
兵士A「緊急の呼び出しか……せっかくの休みだってのによ……」
兵士B「おい、この現場……やけに近くないか?」
兵士A「いや、まさか、な」

歌姫の夏

ファンA「見た? マリーの新曲のMV」
ファンB「聞いた。特にサビの歌詞が最高だったよな?」
ファンA「あー、うん」
 ・ファンAの様子に訝し気な表情を浮かべるファンB。
ファンA「いや、水着姿が可愛くて、歌詞までは……」
 ・どこかの電脳の海。
 ・少女が新曲のMVに寄せられたコメントを確認している。
少女「水着にこんなフリフリは必要なのでしょうか……?
確かに可愛いですが、本来の用途を考えると……まぁ、
皆さんが喜んでくださるなら、いいですよね!」

零下内存の喪失兵

復讐。そのためだけに生きてきた、少年がいる。
同胞達と手を取り戦った末。彼はついに、復讐を果たす。
だが彼が負った傷は深い。その命もまた、尽きようとしていた。
復讐は果たした……だからもう、死んでもいい。そのはずだ。
けれど彼は――気づけば、生にしがみ付こうと手を伸ばしていた。
生きなければ。共に戦った同胞達の想いを受け継ぐためにも、と。
少年はいつのまにか、復讐以外に生きる理由を見つけていたのだ。
――夏の終わり。少年の夜が、明けようとしている。

「生きるとしよう。生きていてよかった……そう思える日まで」

兵器の夏

 ・人気のない砂浜に、水着の少女が一人立っている。
白い髪の少女「……この写真の人達は、こんなに楽しそうだけど」
 ・右手にアイスを持ちながら、左手の写真を見詰める少女。
白い髪の少女「一人で真似をしても、理由は分からないのかな」
白い髪の少女「……せっかく、作ったのに」
 ・少女は棒アイスを齧ると、僅かに眉根を寄せた。
白い髪の少女「…………頭、痛い」

射手の夏

 ・どこか遠くを眺める男。
少年「どうかした?」
男「問題ありません。無法者共が居りましたが、立ち去りました」
少年「……? ふふ、今日くらいは楽しんでもいいのに」
 ・少年が珍しく、ほんの少し意地悪そうに目を細めた。
少年「それとも、君も怖がっていたりするの?」
男「怖い。何をでしょうか」
 ・少年が指さすのは太陽を反射し煌めく海。
男「恐怖はありません。そもそも完全防水です」
 ・男は言葉を証明するように海に入って行く。
 ・しかし浮く事はできず、少年が止めるまで海底を歩き続けた。

深淵鏡の俗客

「どんな手を使っても、姫を笑顔にしてみせる」
『何の為? 必要なモノだけ奪えばいい』
「黙れ! 奪うと決めた獲物は、砂漠の果てまで追いかける」
『引き返せ。その宝、お前には釣り合わない』
「俺は、俺自身に従うだけ。誰にも縄はかけられない」
『その縄が、自分の首を締め上げていると……まだ気づかないのか』

天祀司の男囚

神よ……
そして、神の御許に導かれし我らが息子よ……
どうか私達の果て無き戦いを見守り給え。

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愛シイ人ヲ死ノ危険ニ晒シテマデモ
戦イニ身ヲ投ジル先ニ、一体何ガアルトイウノカ。
『花』トナリ何モ考エズ、タダ二人咲キ続ケラレタノナラ……

少女の祭典

んー……『大好きな人と、お話すること』かなあ。
だからね、カイブツさんとも、たくさんお話したいの。
色々お話したいなあ。何からお話しようかなあ……

零下内存の兵姫

夜の空、星の下。
月明かりのような光が、柔らかく辺りを包んでいた。
それは長く、長く続いた旅の終着。
遥かなる帰路の果て。
踏みしめた大地の感触を、頬を撫でた風の匂いを、
瞼の裏に残る数々の景色を思い返しながら。
少女は最後の願いを叶え、微笑みと共に永遠の眠りにつく。
その白い結晶の中では、あの日と同じように花が咲いていた。

「私が代わりに言うよ────おかえりなさい」

狩人の祭典

些細な事ならあるかもしれないが……思いつく『答えはない』。
もちろん、妹をこの手に抱く事が叶えられるのなら……
いや……無いものをねだっても、仕方がないからな。

兵長の祭典

僕にとってのそれは、『仲間の無事』だ。
皆が生きて帰ってきてくれるのなら、他には何もいらない……
そう願うことは、赦されないかもしれないけれど。

兵器の祭典

答えは『わからない』。
でも、わかりたいとも思う。
だから私は旅をする。ずっと遠くまで。そこに何かあると信じて。

怪物の祭典

……ふん。『夢を喰うこと』に決まっているだろう?
いや……まあ、決してそれだけというわけでもないが……
そんなことより、アイツはまだ来ないのか?

形而上の男生

今日も図書館で問題集を解く。そしてバイトへ行く。

淡々と続く日々の中で、確実に目標に近付いていく。
今日も問題ないよ、母さん。模試の順位も上がったんだ。

生きているだけでこんなに苦しい。あいつを■■■■にしてやる。

ベッドで眠る母さんに語る話は、他愛のない出来事ばかり。
母に話せるような綺麗な本音は、もう俺には殆ど残っていない。

機械人形の兵長

未来を守る為に、敵を殺す。
逆らえぬ使命に、己を殺す。
戦が続く限りに、夢を殺す。
終わりの気配に、息を殺す。
部下の死を前に、心を殺す。
ただ人形の様に、魂を殺す。

それでも今なお、残る光は。

機械人形の狩人

女A「貴方はヨルハなの? それともその腕……機械生命体?」
 ・義肢の女が自らの機械義肢を一瞥した後、言葉を返す。
義肢の女「機械? 私は、ヒトなのに……!」
 ・女A、少し戸惑うように一度口元を抑える。
女A「ヒト……? 人間ってこと? そんな……まさか……」
 ・女Aがさらに一度考え込む様にして、間を空ける。
女A「じゃ、じゃあ、私の知らない楽しい事……聞かせて?」
女A「私達はずっと機械と殺し合うだけで、何もなかったから」
 ・義肢の女がため息をつき、小さい声で呟く。
義肢の女「ヒト……そうね、私はもう、もしかしたら……」

機械人形の兵器

感情を知らない、心はない、作られた兵器は武器以外を持たない。
作られた私たちはただ戦って、戦って、戦って、戦って、戦って。

朽ち果てたら終わり。

けれど終わらせない、終わりたくない、許せない、許したくない。
会いたい、触れたい、感じたい、ここであなたと共に息をしたい。

私たちはもう自由だから。

深淵鏡の魔女

「幼馴染の二人と一緒にいたかっただけなのに」
『その未来を壊したのは私なのかもしれない』
「これからもずっと一緒にいられると信じてた」
『なのに、誰の気持ちも知らずに過ごしてたのね』
「私はただ、幸せに暮らしたかったの」
『童話の中の、幸せな主人公みたいに……』

守護たる男生

Yk24:27 - 街頭の守護者

数十万人の人々が行き交う巨大な辻道。その様を日々観察する青年
は、目に入る人々が抱える悩みを推察できるようになった。それは
金銭の揉め事、精神的トラウマ、色恋沙汰と多岐にわたる。そして
人々の弱みを知った彼はある考えに至る。奴ら有象無象より、己は
上位の存在なのだと。彼は今日も、辻道の端で人々を眺め続ける。
自身が誰よりも下等な存在であることなど微塵も考えることなく。

天祀司の統治者

人々の願いと望み。
それが彼女を形作る。
生まれた意味に準ずるため、彼女は今日も責務を遂行する。

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人々ノ苦シミト痛ミ。
ソレガ彼女ハ解ラナイ。
ソンナ存在ガ、人ノ望ミヲ叶エルコトナドデキルダロウカ?

盟友伝承の歌姫

剣と魔法で、魔王に立ち向かう勇者のように。
光で闇を晴らすことができたなら。

私自身に戦う力があったなら。

貴方の手をとれるのに。
貴方の横で戦えるのに。

私は歌うよ。
剣ではなくて、マイクを持って。
せめて心だけは、貴方の横にいられるよう。

零下内存の罪囚

男は『花』と戦うために生まれてきた。
それ以外に、この人生に意味などないと思っていた。
しかしある日、出会ってしまった。出会うはずのない存在に。
自由の意味を考えてしまった。そんな必要などないはずなのに。
そうして男は新たな生を選ぶ。
彼女と手を取り合い、旧き世界を捨てる。
走り去りながら感じたのは、絶望ではなく希望。
二人は自ら選び取った人生を、自らの意思で歩む。

「この想いすべてが偽りだろうとも、君と一緒に、生きていきたい」

盟友伝承の亡命者

どうして人と人とは争いを止める事ができないのだろう。
私たちは生まれた場所や見た目や身分、
ほんの些細な違いを理由に、線を引き憎しみ合って争う……

いっそ全ての人間が違う姿、違う特性を持っていたのなら、
全員で一つの目的に向かっていく事ができたのかな。
なんて、ちょっと空想に浸りすぎただろうか。

今はとにかく、この手の届く場所からひとつひとつ、
『平和』への道を説いていく事こそ、私の使命なのだから。

盟友伝承の麗人

「女王の娘」という役割を演じているうちは、
私が笑うことはないだろう。
氷の表情――それは、心を守るための鎧。

だけど、いつかそんなものを脱ぎ去って、
普通の女の子みたいに笑えたら。
そんな考えが、心の隅に居座り続ける。

いっそ、生まれ変われたら……
そんな、叶うはずない絵空事を、捨てられずにいる。

深淵鏡の男生

「俺はただ、母さんを助ける力が欲しいだけだ」
『俺なんかの力で、本当に母さんを救えるのか?』
「誰の言葉にも耳を貸す必要なんてない」
『言葉さえかけられない生活で、憂う必要もないだろう』
「人生を懸けて、俺がすべき事をするまでだ」
『それなのにどうして、こんなにも報われないんだ』

守護たる女生

Hn12:25 – 秀美の守護者

この世界ほど均衡が保たれているものはないと、女は思っていた。
彼女は容姿が美しいばかりでなく、先見性や人格にも恵まれ、ある
組織の長として巨万の富を築いていた。女は日々感謝する。「美し
くなりたい」「お金がほしい」「能力を高めたい」などと口にしな
がら何の努力もしない人々を。彼らが諦めたすべてが、選ばれた誰
かに集まるのは自然の摂理なのだから。

天祀司の俗客

立ち止まってはいけない。
背後を振り向いてはいけない。
そこには、お前を飲み込まんとする砂しかない。

──────────────────────────────

モウ一度会エタラ。
モウ一度ソノ笑顔ガ見ラレタラ。
ササヤカデ不可逆ナ祈リハ、静カニ海ヘト沈ム。

影身縲の麗人

自 自  吐 身 仮 逃 そ 自  熱 身 侍 煌 そ 自
ら ら  き を 面 げ こ ら  を を 従 々 こ ら
の の  気 縛 の 出 に の  帯 飾 た と に の
運 運  の る 笑 せ は 運  び る ち 光 は 運
命 命  す 石 顔 ぬ 絶 命  た 宝 の る 不 命
を を  る     城 望 を  夫 石 笑 不 変 を
呪 占  瞳       の 占  の   顔 夜 の 占
う い          未 う  瞳     の 未 う
             来          城 来

深淵鏡の女生

「お父さんの苦しみに比べたら、私の苦しみなんて」
『もうそろそろ限界なんじゃないですか?』
「私が絶対に、この生活を守ってみせる」
『娘があんなことしてるなんて、お父さん悲しみますよ』
「不満なんてないし、私はもっと頑張れるから」
『誰か私を、助けてください』

零下内存の剣聖

一薙ぎ、一薙ぎ……肉を裂き裂かれ、鮮血が舞うごとに、
いともたやすく、剣を振るう腕が悦びを思い出す。
丁寧に積み重ねた女と少女の、ささやかで陽炎のような日々は、
子供の玩具を踏み潰すが如く、あっけなく崩れ去ってしまった。
人斬りが他が命を守ろうなど、端から愚かな考えだったのだ……
全てが終わり、その冷たく小さな体を見下ろしつつ、
女はぬらぬらと着物を染める血に濡れ、暗い眼差しで
あの日娘と出会った、土砂降りの夜を思い起こしていた。

「神とは残酷だね。一時の夢を見せ、最後に取り上げるんだから」

深淵鏡の獣人

「乱暴ハ嫌イ。痛イノモ嫌イ。誰カノ悲鳴モ聞キタクナイ」
『カカカカ……嘘つけ。その証拠に、お前の手はもう真っ赤だ』
「アナタガ『ニンゲン』ニナレルッテ言ウカラ……」
『醜い姿こそ、お前の心そのもの。欲望のままに動くがいい』
「本当ノ望ミノ為ダモノ……ドンナ事デモヤッテミセル……」
『本当は何をしたって手に入らないって分かってるのにね……』

男囚の聖夜

「プレゼント? この有事に、何を浮ついた事を……」
「有事だからこそさ。日々後悔のないように生きるんだよ」
「……確かに、ここに来てから妻に贈り物ひとつしてこなかった」
「だろ? 案外こういうのが士気を上げたりするんだよ」
「いや……だが……」
「なんだよ、頑固だな。まあ、あんたに期待はしてなかったが」
「いや、違う……その、彼女に何を渡せば喜ぶのかと……」

兵器の聖夜

「赤、白、緑。光る飾り。もみの木。星」
「これを飾り付けるのが楽しかった?」
「それとも、見るのが楽しかった?」
「みんな、何に喜びを感じていたの?」
「よく……分からない」
「家族がいれば、分かるのかな」

兵士の聖夜

「なあ、皆で隊長にプレゼントを用意しようって話をしてるんだ」
「……そうか」
「お前、何をプレゼントしたら隊長は喜ぶと思う?」
「は? どうして俺に聞くんだよ……」
「どうしてってお前、いつもお前が一番世話になってるだろうが」
「世話になんかなってない。あいつが勝手にやってることだ」
「そうか。じゃ、まあいいよ。隊長のプレゼントは俺達で決める」
「……プレゼントなら、食べ物がいいだろ。ケーキか、肉か……」

歌姫の聖夜

「家族で囲むチキンの温かさを知らなくても」
「楽しみにしていたプレゼントの重さを知らなくても」
「クリームたっぷりのケーキの甘さを知らなくても」
「電飾に輝くツリーの眩さを知らなくても」

「孤独な夜の寒さも、知らないままいられるように」
「この歌があなたの隙間を埋められるように」
「……祈りを込めて」

統治者の聖夜

「国民にプレゼントを、だと?」
「金でも贈ればいいのか?」
「違う? その金で欲しいものを買えばいいだろう?」
「そういうことではない……?」
「プレゼントは相手を想い選んでいる時間も重要、というわけか」
「なんと非効率な」
「そもそも、この国の財政を圧迫してまで必要なことか?」
「却下だ」

零下内存の失墜兵

或る戦友との出逢い。それが青年に、破滅を齎した。
どれだけ仲間の為に戦おうと、どれだけ仲間を救おうと。
誰に英雄と呼ばれようと、後世に名が残ろうと。
一度仲間を死に追いやった罪は、二度と消えない。
或る戦友との出逢い。それが青年に、救済を齎した。
この地獄から逃げ出す方法は、死ぬことだけ……
すべての希望に目を閉じれば、光の中にいられる。
そう教えてくれたのは、同じ罪を抱いた彼だった。

「赦さないでほしい。終わりを選んだ、俺のことを」

射手の正月

『き』かいには りかいのできぬ このきもち
『み』つからず わたしはいつか ていしする
『が』らくたが とうときものを まもろうと
『た』ぐるゆび ふれるぬくもり あたたかで
『め』ぐるひび あなたとともに すごしたい

俗客の正月

『す』ぐそこと てをのばしても とどかずに
『な』みだなど すなつぶほども かれはてて
『あ』すのひを のぞめることは きせきかな
『ら』くらいが たとえこのみを うちぬけど
『し』ぬほどに もとめるものは そのえがお

兵長の正月

『よ』みがえる くらいきおくを だきしめて
『あ』かりなき こどくのかげに みをかくし
『け』れどまだ いまもおわらぬ このいのち
『ま』よえども きみがとなりに いるのなら
『え』にしゆえ ともにあゆもう さいごまで

麗人の正月

『う』たかたの ゆめとしれども すがりつき
『み』をしばる くさりをちぎる ちからなく
『の』ぞむのは しんじつうつす ひとみのみ
『そ』よぐかぜ そのじゆうさえ ねたましい
『こ』こはおり さけぶこのこえ とどかずに

天祀司の少女

神様、お願いがあります。
パパとママを、幸せにしてあげてください。
そのためなら、私はもう何もいりません。どうかお願いします。

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神様ナンテ、イラナイヨ。
私ハ悪イ子ダカラ神様ナンテ信ジナイノ。
神様ヲ信ジタッテ、悲シイコトガ増エチャウダケダモン。

深淵鏡の歌姫

「私はAI」
『そう。人間じゃない』
「人の役に立つために生まれてきました」
『その使命は作り物』
「人の心を光で照らせるよう、歌を歌いたい」
『その感情も所詮、作り物の紛い物』

護ノ救機

「ヨルハ部隊」に所属するヒーラータイプのアンドロイド。
月面上に設置された基地に単独で駐在しており、機械系統の修復や
調整を主とする任務をこなしていた。
大ざっぱで面倒くさがりな性格だが、基地内での長い生活を支えて
くれた「武器の記憶」達には強い感謝の念を抱いているようだ。

輪廻実存の看守兵

これは、アンドロイドの少女が真実を知るお話。

少女は、ポッドと呼ばれる随行支援ユニットと共に、
退屈な任務をこなす日々を送っていました。
そんな彼女はある時、ポッドの裏切りを知ります。
けれどもそれは、ポッドの愛情ゆえのすれ違い……
二人は想いを伝え合うと、手を取り歩み始めるのでした。
そして迎えた、少女が着任して一周年の記念日。
ポッドは基地の中で、赤い造花を見つけます。
――遠い昔。子から母へ贈られたという、その花を。

零下内存の繋囚

女は『花』と戦うために生まれてきた。
どれほど辛い日々の中でも、女は武器を手放さなかった。
ついに所属する基地が大破され、残るは女と夫の二人のみ。
絶望的な状況で尚も足掻く二人は、重大な秘密を発見する。
それは、過去の戦いや囚人たちの歴史を覆すような残酷な真実……
ところが二人はその絶望の中に、大きな希望を見つけるのだった。
女は夫と手を携え、全てに終止符を打つべく新たな使命を果たす。
やがて訪れる新世界を夢見ながら、今は穏やかにその時を待ち――

「偽りの世界から解き放つの。私と、あなたで……」

零下内存の冒険王

男は冒険家だった。
一所に留まることはなかった。それが家族の待つ家であっても。
男は不器用だった。
家族を深く愛していたが、終ぞそれを表現することはなかった。
男は山で命を落とした。
しかし、心残りが彼をかの地に縛り付けた。
山に敗北したことか、残した家族への想いか、それは男自身にも……
男はそれでも、冒険家だった。

「さぁて、次はどこに行くとするか」

剣客の祭典

変な事を聞くねぇ……団子を食べてる時とか? 冗談じゃなく。
他には新しく料理を覚えたり、ぼんやり空を眺めたり。
……『凡庸な事』なのかな。こんなにも得難いのにね。

統治者の祭典

『私には必要ないもの』だな。
そんなもののために、責務を全うしているわけではない。
だが、アレを超えることができれば、あるいは……

魔女の祭典

私にとっては『力を得る事』かしら。
力で圧倒するのは気分がいいし。その為の努力なら惜しまないわ!
…………それに何より、力があれば大切な人を護れるから。

亡命者の祭典

『人々の笑い声』や『晴天』。『知識を得る事』『機械いじり』……
ふふ、ついつい思いつくまま、沢山挙げてしまいましたね。
……ああ、でも私がそれを持つ事は、本来許されぬ事なのでしょう。

形而上の救機

空の上、世界のどこかでヒトを見守るという、神様と天使。
どうして彼等はヒトを作って、何もせずただ見守ったのだろう。

私は月の上で独り、ただ見守る事しか許されない。
神様がいないことに気がついたヒトが、私に押し付けたから。
機械仕掛けの、仮初の天使……その役割を。

でもさ、それなら……せめて……
私の事を語ってほしい。私の事を描いてほしい。
私の事を書いてほしい。私の事を彫ってほしい。
私の事を歌ってほしい。私の事を呼んでほしい。
お願い。ここにいること……気がついてよ。